フラックス洗浄方法の種類と選び方
~洗浄方式別の特徴と選定基準~
フラックス洗浄を検討する上で、最適な洗浄剤x洗浄方法の組み合わせを選択することは大切です。
今回は、お客様からも多くいただくご質問の1つである『洗浄方式の種類と選定方法』について解説します。
『フラックス洗浄の基礎知識』をまとめた資料もあわせてご覧ください。
おすすめ資料「フラックス洗浄の基礎知識」
- フラックス洗浄とは?
- 洗浄剤の種類と選定方法(水系洗浄剤・溶剤系洗浄剤)
- 洗浄方式の種類と選定方法(スプレー・超音波・噴流)
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フラックス洗浄とは
フラックス洗浄とは、実装後のプリント基板、パワーモジュール、半導体パッケージ、リードフレームなどを保護しながらフラックス残渣(コンタミ)を除去する事です。
フラックスははんだ付けには必要不可欠な存在ですが、残渣があることにより、マイグレーションの発生やモールディングの密着不良などの不具合が起きる可能性があり、洗浄が必要なケースがあります。
スプレー(シャワー) | 超音波 | 噴流 | |
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メリット | ・一定の物理力を得られる ・物理力の調整が容易 ・液置換性に優れる |
・微細な部分までの洗浄効果が大きい ・出力調整により物理力の調整可能 |
・一定の物理力が得られる ・ワークに対しての影響が軽微 |
デメリット | ・角度や形状の調整が不可欠 | ・部材に対してもアタック ・液音制御が必要となる ・超音波で破壊される部品あり |
・よどみは発生しやすく、細部までの洗浄が困難 |
物理的特性 | ![]() |
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懸念点 | ![]() |
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スプレー(シャワー洗浄)
スプレー洗浄は、ご紹介する方式の中で唯一ワークを液に浸漬させない方法で、洗浄液自体が物理力(運動エネルギー)を持つ洗浄方式です。そのため、洗浄後ワークを取り出す際に汚れが再付着する可能性が低く、微細部分の洗浄にも効果的です。スプレー洗浄装置はバッチ式とインライン式に分かれており、それぞれの特性をご紹介します。
バッチ式スプレー洗浄機
<バッチ式スプレー洗浄機の概要>
- 1日の処理最大目安:500枚程度(基板換算)
- 省スペースで設置可能
- 洗浄機価格:600~2000万円
- 洗浄液の持ち出し量が多い
インライン式スプレー洗浄機
<インライン式スプレー洗浄機の概要>
- 1日の処理最大目安:数千枚~(基板換算)
- 高圧、高速洗浄が可能
- 一定のスペースが必要
- 洗浄機価格:2500万円~
- 洗浄液の持ち出し量が少ない
超音波洗浄
超音波洗浄は物理的作用と化学的作用の2つの作用を用いて洗浄します。
物理的作用・・・キャビテーション、振動加速度、直進流などが、汚れを剥離・分散・乳化させる
化学的作用・・・洗浄液の成分による化学的作用と、超音波による化学反応促進作用が汚れを溶解・分解させる
【周波数によって性質が異なる】
【適用周波数例】
<超音波洗浄の概要>
- 1日の処理最大目安:~数千枚まで
- 細かい部分の洗浄にも対応
- 一定のスペースが必用
- 洗浄機価格:数百万円~
- 抜群の洗浄力を有する
キャビテーションによる洗浄(蒸気性) 15~50kHz帯(低周波数領域)
- 蒸気性キャビテーション:主に周波数で発生
(物理エネルギー大)
(水蒸気が圧縮されている状態)
- 気体性キャビテーション:全周波数で発生
(高温・高圧の液体が圧縮されている状態)
噴流洗浄
噴流洗浄は汎用性が高い方式ですが、よどみが発生しやすく、基板と部品間の狭い部分のような細部までの洗浄は困難です。
<噴流洗浄機の概要>
- 1日の処理最大目安:数枚~数千枚まで
- 装置仕様がシンプル
- 一定のスペースが必要
- 洗浄機価格:数百万円~
- 汎用性が高い⇒日本での主流方式
① 目的・清浄度
洗浄の目的、要求される清浄度レベルの確認しましょう。
洗浄タイプ、無洗浄タイプのはんだペーストにより難易度は異なります。
② 材料適合性
洗浄に適した部品が使用されているか確認しましょう。
③ 生産量
洗浄数量によって、設備仕様、ランニングコストが変化します。
④ ランニングコスト
洗浄剤単価だけでなく、年間でのトータルコストを確認しましょう。
液交換頻度、廃液処理費も影響があります。
⑤ 安全性
洗浄剤の法令を確認。海外工場はさらに注意が必要です。日本法令基準では通関できない諸外国もあります。
- 超音波の使用可否・・・微細洗浄にも効果が大きく、汎用性が高い洗浄方式ですが、搭載部材との適合性が求められます。
- 微細部分の有無・・・BGA/QFNの下部、SIP/QFP隙間洗浄は噴流方式では困難です。
- 洗浄対象の処理/枚数・・・処理数が多い場合は、インライン式が推奨されます。ランニングコストも低下する傾向があります。

高密度実装時のおすすめ洗浄方法
昨今の半導体実装は『多層化』と『高密度化』に伴い低スタンドオフ化・狭ピッチ化しています。よって、洗浄検討を行う際のポイントとしては、洗浄液の「ぬれ性・洗浄性」に加え、「液置換性」フラックス残渣が再付着する可能性が低く、微細部分の洗浄にも効果的なスプレー/シャワー洗浄がおすすめです。

▼関連記事①:ゼストロン洗浄剤2種とIPA・溶剤との洗浄性比較も!
耐熱性 難溶性物質含有フラックス残渣除去性能をより強化したVIGON PE 305Nとは?
▼関連記事②:ゼストロンサポートによる洗浄不良課題解決事例
洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。