フラックス残渣とは?フラックス残渣の種類と分析方法

フラックス残渣は、電子部品実装における信頼性に大きく影響する要因の一つです。はんだ付け後に基板や部品表面へ残る微量な残渣は、導通不良腐食封止不良などの品質トラブルにつながる可能性があり、近年は高信頼性分野を中心にその管理と評価の重要性が高まっています。
特に近年のはんだペーストは高機能化が進み、フラックス残渣の成分や形態が多様化しているため、外観検査だけでは把握できないケースも増えています。そのため、残渣の種類を理解し、適切な洗浄と分析手法を組み合わせて評価することが不可欠です。

本記事では、フラックス残渣の基礎知識から、不具合事例、洗浄が求められるワーク、さらに残渣の種類に応じた分析方法までを体系的に解説します。洗浄プロセスの最適化や品質向上に役立つポイントを整理して紹介します。

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1. フラックス残渣とは

フラックス残渣は、はんだ付け後のワーク上に残るフラックス由来の残渣(コンタミ)のことで、成分はイオン、金属塩、有機物などがあります。
フラックスについて、詳しくは下記ページをご覧ください。
フラックスとは?役割や成分、種類、最新トレンドなどを解説

洗浄ペーストは洗浄する前提で成分を配合しているため、そのままにしておくと、マイグレーションによる絶縁不良や、腐食などの可能性が高まり、用途によっては人命やインフラにも関わるため、洗浄が必要となるケースがあります。
一方、無洗浄ペーストの場合、フラックス残渣は安定化しますが、信頼性確保のため洗浄するケースも増えてきています。 無洗浄ペーストの洗浄や洗浄需要について、詳しくは下記ページ・資料をご覧ください。
無洗浄はんだを使用しているのに、なぜ洗浄する必要性があるのか
はんだ洗浄の今を探る


2. フラックス残渣がもたらす不具合例

フラックス残渣が直ちに不具合を引き起こすわけではありませんが、使用環境や条件によっては、以下のような不具合につながるリスクがあります。

| 導通不良

マイグレーションを起こしショートした端子間
マイグレーションの様子
フラックス残渣に含まれるイオン性化合物・金属塩が水分と結合して電解質溶液を形成すると、電圧印加によって金属イオンが移動・析出するマイグレーションが発生し、導体間が導通

フラックス残渣に含まれるイオン性化合物・金属塩は、温度や湿度の変化によって水分と結合し、電解質溶液を形成します。この状態で電圧が印加されると、陽極から陰極へと金属イオンが移動し、陰極側で樹枝状(デンドライト状)に金属が析出するマイグレーションが発生します。
この析出物が電極間を橋渡しすることで本来絶縁されているべき導体間が導通し、短絡(ショート)が生じ、回路の誤動作や故障につながります。

樹脂コーティング下で結露が発生
コーティング下で発生した結露
樹脂コーティングや封止を行う前に基板表面にフラックス残渣が残っていると、コーティング材との密着不良が生じる

樹脂コーティングや封止を行う前に基板表面にフラックス残渣が残っていると、コーティング材との密着不良が生じます。
また、残渣を起点としてコーティング下に水分が侵入・凝集し、結露が発生するケースがあります。この水分がイオン残渣と結びつくことで電解質溶液が形成され、本来絶縁されているべき導体間が導通し、絶縁抵抗の低下や腐食を引き起こします。さらに、コーティング自体の剥離・浮き上がりを招き、防湿・防塵機能を損なう原因ともなります。

フラックス残渣は、はんだ付け後のワーク上に残るフラックス由来の残渣(コンタミ)のことで、成分はイオン、金属塩、有機物などがあります。 洗浄ペーストは洗浄する前提で成分を配合しているため、そのままにしておくと、マイグレーションによる絶縁不良や、腐食などの可能性が高まり、用途によっては人命やインフラにも関わるため、洗浄が必要となるケースがあります。
ワイヤーボンディング
ワイヤーボンディングやフリップチップ接合など、微細な接合工程においても、フラックス残渣は大きな障害となる

ワイヤーボンディングやフリップチップ接合など、微細な接合工程においても、フラックス残渣は大きな障害となります。
接合面にフラックス由来のイオン性化合物や有機物残渣が残存すると、金属間の接触を妨げ、密着不良による接合強度の低下や接合部の剥がれが生じます。

 

フラックス残渣が引き起こす不具合の多くは、外観検査では捉えられないまま進行し、不具合が顕在化して初めて気づかれるケースが少なくありません。
自社のワークにどのような残渣が残っているか気になる方は、まず分析から始めることをおすすめします。
洗浄プロセスの構築や改善を検討している方は、実ワークを用いた洗浄テストもお気軽にご相談ください。
残渣の分析を相談する  実ワークで洗浄テストを依頼する


3. 洗浄が求められるワーク

実際にどのようなワークにおいて、洗浄が求められるのでしょうか。
最近では特に自動車・通信分野において、信頼性確保のために洗浄が必須化されており、

例えば…

  • IGBT
  • 5Gデバイス
  • イメージングセンサ
  • 通信モジュール

などの製品は洗浄することが国内でも増えてきています。

ちなみに海外では、上記のような分野の製品は洗浄することがほとんどです。
このような高精度な電子デバイスにおいて、洗浄方法と洗浄後の分析(清浄度の評価方法)が昨今の課題となっています。
フラックス洗浄や洗浄後に分析について、詳しくは下記ページ・資料をご覧ください。
フラックス洗浄とは?必要性・方法・選定ポイントをわかりやすく解説
フラックス洗浄方法の種類と選び方 スプレー・超音波・噴流の原理と選定基準を徹底解説
洗浄後の清浄度評価 フラックス残渣や焼結接合後の残渣の分析方法


4. フラックス洗浄後の分析

現在の主流評価方法は信頼性評価をパスした後、実際の製造工程でAOIによる外観検査を行うことで、製品不良の可否を判断しています。
しかし、製品検査後において不良が生じてしまう事例が増加しています。
このような事例が発生している一つの要因として、フラックス残渣成分が多様化していることが挙げられます。
理由として、昨今のはんだペーストは信頼性確保のため、耐熱・ヒートサイクル耐性・微細接合性・接合強度のような性能向上を目的とし様々な材料が添加されており、従来の方法では可視化できないフラックス残渣が発生しているからです。

4.1 フラックス残渣の成分

性能別にはんだペーストに添加されている成分と、どのようなフラックス残渣が発生するかご紹介します。

  耐熱 ヒートサイクル耐性 微細接合性 接合強度
添加される成分 ・ポリマー等 ・In、Sn、Biなどの
 レアメタル
・溶剤
・ポリマー
・有機酸
・有機アルカリ
・ハロゲン
フラックス残渣の種類 有機物 金属塩 有機物 イオン

 

上記はあくまで代表的な残渣の種類であり、実際は様々な成分が混ざり、複合物質残渣となります。
さらに、フラックス残渣の中には可視化できず、表面高さの違いもほとんど見られないものもあります。
このようなフラックス残渣を洗浄するためには、いかにして洗浄対象物を見極めるかがポイントとなり、残渣の種類に応じて適切な分析手法を選択する必要があります。

自社のワークにどのような残渣が残っているかを把握することが、適切な洗浄プロセス構築の第一歩です。残渣の成分特定にお困りの場合は、ゼストロンの分析サービスをご活用ください。

残渣の種類を分析してもらう

4.2 フラックス残渣の種類に応じた分析手法

先ほど挙げたフラックス残渣の種類に合わせて適切な分析手法をご紹介します。

フラックス残渣の種類 イオン 有機物 金属塩
分析手法・装置 イオンクロマトグラフィー

FT-IR

SEM-EDX

 

4.2.1【イオン】イオンクロマトグラフィー

水溶液試料中に含まれるイオン種成分をカラムを用いて分離し、検出器にて各イオン種成分を検出する分析手法です。
そのため、各イオン種に応じた定量的測定が可能です。

4.2.2【有機物】FT-IR

各有機物の固有スペクトルを測定することが可能で、フラックス残渣成分の分析に有効な分析手法です。残渣物質がフラックスによるものなのか、洗浄液等の残留による影響かなど、詳細な起因分析が可能です。
測定対象物に赤外光を照射し、透過または反射した赤外光を測定することで、対象となる物質を測定します。

ATR法

ATR 法は、プリズムを直接測定部に押し当てて赤外線を増幅させるため、有機物残渣が微量に存在する場合であっても高精度な判定が可能となります。

反射法

一方、反射法は赤外レーザーを使用した反射光によって測定を行うため、非破壊で検査できる利点があり、クリスタルが接触できないような細部の分析も可能となります。

FT-IRでは有機物質が持つ固有のスペクトルを得られるため、目視観察では確認の難しい微量な複合有機物を特定することが可能です。

FT-IRのスペクトル

4.2.3【金属塩】SEM-EDX

対象物質に電子線を照射することで発生する特性X線を検出し元素分析を行います。
また、主に2次電子によって対象物質表面の微細な凹凸を検出する手法です。

このような分析方法を用いて、要因を的確に判断できることは、洗浄工程を構築する際に、非常に重要な要素となります。


神奈川県にあるゼストロンの分析センターには、マイクロスコープ、FT-IR、イオンクロマトグラフィ、SEM-EDXなどの観察/分析装置があり、トレーニングを受けた専任のスタッフが、洗浄後の残渣確認や、不具合が起きている場合の原因分析、定期的な清浄度分析などをお手伝いいたします。

また、必要に応じて分析結果をおまとめしたレポートを提出し、分析結果を踏まえた洗浄プロセスの最適化・構築もご提案いたします。分析に関して、何かお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

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