水系洗浄剤とは?種類や特徴、水分量について解説
フラックス洗浄剤は大きく分類すると「溶剤系」「準水系」「水系」に分別され、ゼストロンでは「水系洗浄剤」を水が第一成分系(水の含有率が50%以上)を満たしているものと定義しています。
国内では水系洗浄剤と呼称されていても有機系成分が第一成分系となる仕様や、準水系と呼称されている場合であっても、その多くの成分が溶剤成分を占める洗浄剤もあります。
定義や表現は様々ですが、水系洗浄剤を語る上では水分量が何%を占めた洗浄剤であるのかに着目していただき、その特性を理解いただけたらと考えます。
水系洗浄剤の種類としては、
- 酸、アルカリ成分を添加した洗浄剤
- 各メーカーで水とアルコール等をブレンドしている洗浄剤
- エマルジョンタイプの洗浄剤
などがあります。
おすすめ技術資料「水系洗浄剤の定義とは?」
- 水系洗浄剤とは
- 昨今のはんだ・フラックス組成
- 溶剤系洗浄剤の工程管理上の課題 など
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1. フラックス洗浄剤の種類
水系洗浄剤:水が主成分を占める洗浄剤
準水系洗浄剤:水の含有率が約50%の洗浄剤
溶剤系洗浄剤:有機溶媒が主体の洗浄剤
※ゼストロンが提言する洗浄剤の基準
上記で説明したように、国内において洗浄剤区分はあいまいですが、水の添加量によって洗浄剤区分が決定される事例として、中国深圳でのVOC規制における洗浄剤区分を紹介します。
▼中国深圳市における電子部品向け洗浄剤のVOC規制値
| 溶剤系 | 準水系 | 水系 | |
| 2026年 VOC含有量(g/L) | 800以下 | 250以下 | 40以下 |
| 2023年 VOC含有量(g/L) | 850以下 | 250以下 | 50以下 |
※DB4403/584-2025 微細電子工学および電子組立に使用する洗浄剤の揮発性有機化合物(VOC)および特定有害物質の制限(深圳市地方標準)に基づく(2026年2月施行)。
※2026年6月17日時点の情報です。
中国ではEV(電気自動車)や電子機器産業の発展の伴い、環境保全の観点から環境規制を強化しています。
洗浄剤に含有するVOC量において明確に「水系」「準水系」「溶剤系」の3種に区分されており、中国で操業する企業は当局からの指導や管理措置の厳しさから「水系」「準水系」区分に相当する洗浄剤でフラックス洗浄を行うのが通例となっています。
仮に「準水系」の区分となるVOC 250 g/L相当を達成するのであれば、使用時における洗浄剤中の水の含有量は80%程とならないと「準水系」区分の洗浄剤とはなり得ません。
よって国内で使用されている溶剤系成分が多い洗浄剤は中国国内での使用が難しくなっています。
2. 水系洗浄剤の特徴
- 作業環境に優しい
- 安全性が高い
- 多くが非危険物
- スプレー、超音波、噴流など様々な洗浄方法において展開しやすい
- イオン残渣に有効(水溶性物質を潤沢に溶解可能)
⇒最新のデバイスにおいて特に課題となっているのは、視認できない残留物であるイオン残渣です。詳細は技術資料『イオンとの共存共栄を目指す イオン残渣の課題と分析方法』を参考にご覧ください。
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- そもそもイオンとは?
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2.1 水系洗浄剤の洗浄メカニズム:フラックス残渣を確実に除去できる理由
一般的な溶剤系洗浄剤がフラックス残渣を溶解作用のみで除去するのに対し、ゼストロンの水系洗浄剤はMPC®(マイクロフェーズクリーニング)による剥離+溶解作用でフラックス残渣を除去します。
水溶性残渣(イオン残渣)と脂溶性残渣(ロジン系残渣)の両方を同時に除去できるうえ、溶解だけに依存しない「剥離洗浄」の作用も加わることで、溶剤系では対応が難しい難溶性フラックスにも効果を発揮します。
2.2 高密度実装基板への対応力と微細部への浸透性
近年の高密度実装基板では部品下の隙間(狭ギャップ)が極めて狭くなっていますが、ゼストロンの水系洗浄剤は、表面張力が有機溶剤と同等レベルなため、BGAやコネクタ下といった微細な隙間にもスムーズに浸透します。
スプレーや超音波などの物理的な洗浄方式と組み合わせることで、複雑な実装構造の奥深くに入り込んだフラックス残渣もしっかりと除去することが可能です。
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2.3 法規制対応(VOC・消防法・PFAS)と安全性向上のメリット
水系洗浄剤を採用する大きなメリットの一つが、環境負荷の低減と安全性の向上です。
VOC(揮発性有機化合物)の排出量を大幅に抑制できるだけでなく、多くの製品が消防法上の非危険物に該当するため、防爆設備のコスト削減や保管場所の制限緩和など、管理面での負担を大幅に軽減できます。
また、近年は欧州・中国を中心にPFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances:有機フッ素化合物)規制の強化も進んでいます。
現時点ではフラックス洗浄剤を直接対象とする法規制は存在しませんが、PFOS・PFOA・PFHxSなどの特定PFASはすでに厳格な管理対象となっており、今後は欧州の規制動向を追う形で規制範囲が拡大する可能性が高い状況です。
ゼストロンの水系洗浄剤はPFASフリーかつ低VOCのため、現在だけでなく将来の環境規制にも対応可能です。
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水系洗浄剤はこのようなメリットがあり、さらに各国のVOC対策の強化、各企業のSDGsによる脱有機溶剤への取り組み、水溶性フラックスへの転換を模索する動きなどにより、水系洗浄剤は改めて注目されています。
しかし、水系洗浄剤が混合物である故に避けられない論点として水と有機溶剤との成分構成比が挙げられます。構成比が異なる場合、上記のようなメリットが十分に受けられない可能性があります。
洗浄剤において、水分含有量になぜ着目する必要性があるのかフラックス洗浄剤における水分量差による影響で解説します。
水の作用を利用した洗浄剤を用いた際、洗浄工程では例外はあるものの、洗浄時には洗浄剤を加温して運用することが前提となり、70℃以上といった場合も珍しくはなく、水の蒸発損失が問題となってきます。
水は洗浄剤に添加されている有機溶剤と混在する場合、沸点の関係性から有機溶剤よりも水の方が蒸発飛散しやすい傾向にあります。
水を含有している洗浄剤は、水の損失が過大となるため常に水を定量的に補給する必要がありますが、水の含有量が少ない溶剤系洗浄剤はよりシビアな調整が必要となるため、工程管理の安定性という観点からはリスクが大きくなってしまいます。
▼水の蒸発の影響差
- 同一温度では蒸気圧が大きい方が蒸発しやすいと言える
- 蒸気圧が大気圧と同等以上となった場合→沸点となる
- 水は50℃を境に急激に蒸気圧が上昇する
水分含有量が低下していった場合、水溶性物質の溶解力の減少に加え、引火の危険性を考慮しなくてはいけません。
一般的な数値として概ね水の含有量が5%を下回った場合には水添加の効力は徐々になくなり引火の危険性が高まるため、洗浄時の設備的なケアが求められます。
3.3 水の含有量が増加した場合
水の特性を利用した洗浄剤の場合、含有成分の構成例としては次の図のようになります。
水に加えて脂溶性を確保するための有機成分と、フラックスに使用される酸性の特性をもつロジン系物質である「脂肪酸」を中和させ、水に溶解させやすいよう「塩」の形に変化させる中和剤の働きをする「アミン系物質」からなる構成が主流です。
さらに界面活性剤を添加して洗浄性を強化する手法などがあり、総じて水の作用を利用した洗浄剤の多くはアルカリ性を有しています。
水分量が少ない環境下でアルカリ特性を有する物質は「有機溶剤」として振る舞い、時にアビチエン酸の中和のために消費されていきますが、水分量が徐々に多くなった場合は急速に電離が進むことで、イオン形態を有する形へ変貌し、その結果pHの急速な変動を起こしやすくなり弱アルカリ性だった洗浄剤は強いアルカリ性を示すようなります。
また、水の作用を利用した洗浄剤は加温して使用することが前提のため、酸・アルカリの作用は促進されるのでさらにpHへの影響は大きくなります。
▼アミン系物質の特性
昨今の電子デバイスは様々な物質を複合化した集合体ともいえ、強アルカリ性を有することは樹脂素材や金属表面への影響も大きくなり好ましい環境下であるとはいえません。
溶剤系洗浄剤であっても洗浄剤に水の添加がなされている仕様であれば、リンス工程は水を使用するのが一般的です。
洗浄時の水分管理を徹底し、適切な洗浄ができたとしてもリンス時には「水の含有量が増加した場合」で論じた懸念が生じてしまいます。時間としてはわずかですが、溶剤系洗浄剤がリンス水と接触した場合はスポット的にpH変動の影響は大きくなります。
特にパワーデバイスは金属の集合体であり、多くのベアチップ表面はアルミ、絶縁素子として使用されている樹脂はポリイミドが主体で構成されているため、強アルカリ性への耐性が懸念される両物質の腐食や溶解が生じる可能性は高いです。
4. 水の含有量が多い洗浄剤であるからこその安定性/pH変動抑制
ゼストロンの洗浄剤は水が80%以上を占める洗浄剤であるため、蒸発損失時の影響を低減する事ができ、水分量の増減に対する負荷にも柔軟に対応する事が可能です。
しかし、水が第一成分系となる洗浄剤であっても少なからず「リンス時の影響」のような懸念が考えられますが、このような作用を抑制するために「緩衝作用」を利用した対応策を取っています。水が系中に潤沢にあるため非常に効果的な手法です。
このように、水の作用を利用した洗浄剤は水分含有量によって大きく洗浄作用が異なり、洗浄の持続性・工程安定性も異なるためこの点に留意いただき、課題に合わせて最適な洗浄剤の選択ができるよう精査することが非常に重要です。
工程管理上無理のない水分量の制御と有機成分の作用を適切に引き出す環境を実現し維持することが、水の作用を利用した洗浄剤にとっては命題となります。
弱酸とその弱酸のイオン形態をもつ塩を混合した溶液において、pHの変動がゆるやかになる作用。
弱アルカリ性の物質でも同様の機構が働く。
2つを混合した場合、CH3COO- の量が増加するので、CH3COO-の量を抑制しようとするため酢酸の電離する作用が抑えられる。
→pHの変動が少なくなる。
5. 水系洗浄における乾燥工程のポイント
水は有機溶剤と比較すると蒸発しにくい特性を持つため、水系洗浄では乾燥工程が重要になります。しかし、「水は乾燥しない」というわけではありません。
実際には、水は常温環境であっても少量であれば自然に蒸発します。この蒸発を促進するために、以下のような方法が用いられます。
- 加温:十分な熱を加えることで蒸発を加速する
- 送風・空気置換:湿度を下げることで乾燥効率を高める
- 液切り機構の強化:洗浄装置設計の段階で液切りを最適化し、乾燥工程へ持ち込まれる水分量を低減する
近年の洗浄装置は非常に優れており、液切り機構と乾燥機構を適切に設計することで、水系洗浄でも短時間で乾燥できるようになっています。
ゼストロンの水系洗浄剤は予めpHの変動や金属部材への対策として上記で示した緩衝作用に加え、金属表面への保護作用を考慮した設計がなされており、有機成分の含有量は必要最低限の含有に留めています。
水溶性物質と脂溶性物質の両立した洗浄作用を可能としているのは、MPC®(マイクロフェーズクリーニング)の作用によるものであり、複合洗浄作用が実現できるよう組成を最適化しております。
溶剤系洗浄剤から水系洗浄剤へ代替したいが、どのような水系洗浄剤がワークに合っているか分からない、水系洗浄剤の技術的な事項をもっと詳しく聞いたみたい、ゼストロンの水系洗浄剤を比較検討してみたい方は、ぜひお問い合わせください。
水系洗浄剤の選定・切替に関するあらゆるお悩みや課題の解決に向けてサポートします。
洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。