水溶性フラックスの洗浄課題
~絶縁性能と残渣分析~

【共同研究'25】弘輝 様 x ゼストロンジャパン

現在の日本におけるエレクトロニクス実装では、はんだ付けにロジン系フラックスが主流として使用されています。しかし、SDGsの推進や環境負荷低減への関心の高まりにより、VOC排出削減や洗浄負荷の低減化が期待できる水溶性フラックスの評価検討が活発化しています。

今回はロジン系フラックスよりも洗浄が容易であると認知されている水溶性フラックスにおける洗浄の実情を調査した内容をご案内いたします。

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水溶性フラックスは水溶性物質をベースとした組成のため、「純水で容易に洗浄できる」と考えられがちです。

しかし、水溶性フラックスとはで記述した通り、水溶性フラックスはロジン系フラックスと比較し活性剤量の含有量が多く、洗浄は必須であり、洗浄後のイオン残渣に注意した適切な洗浄が求められます。

また、必要に応じてとなりますが、清浄度分析の手法に関してはロジン系フラックスと同様の過程を経る事になります。


▼活性剤の含有量のイメージ

ロジン系 水溶性

加えて、水溶性フラックスが使用されるPCB分野ではICやコンデンサ・チップ抵抗などの高密度実装により電極間・バンプ間がより狭小となっている事でイオン残渣による影響をよりうけやすくなる傾向にあり、下記が課題となっているケースが多く見受けられます。

  • 表面抵抗値の低下
  • 絶縁不良

よって今回の弘輝様との共同研究では、洗浄後のイオン残渣の「量」だけでなく、形態変化や抵抗値なども含め総括的な影響を調査しました。

□電極間の挟まり

□バンプデザインの緻密化


  • はんだペースト:
    S3X58-HF950W  
    (株式会社弘輝 様)
     
  • 洗浄剤:
    HYDRON® SE 220  20%濃度 

  • 洗浄方式:超音波 

  • 洗浄温度:60℃

条件 洗浄時間 1stリンス 2ndリンス
未洗浄 - - -
ワースト 0.5分

洗浄剤3wt%添加水 常温 0.5分

なし
不十分 2分

洗浄剤3wt%添加水 常温 2分

なし
ベスト 10分

純水 常温2分

純水 40℃ 2分

 

<ECMテスト条件>
IPC-TM-650 test methods manual 2. 6. 14. 1 準拠
65℃ 88.5% 500時間


検証結果

イオン残渣はわずかな量であっても抵抗値へ影響を及ぼす事が確認された
マイクロスコープでは観察困難な状況でも、SEM-EDSを用いた元素分析では
基板由来ではないC元素(有機物残渣由来)を可視化する事が可能

分析:SEM-EDS 走査電子顕微鏡 
入射電圧:5.0~10.0kV WD : 10mm

走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法とは、加速された電子線を照射し試料表面の拡大観察を行うSEMと、その電子線照射によって発生する特性X線を検出し元素分析を行うEDSを組み合わせた装置です。
JSM-IT710HR/LA(日本電子株式会社製)

*SEMでの観察では適切な加速電圧・電流値の設定が不可欠となります。

チップ抵抗間のフラックス残渣の反射電子像

今回評価に使用したHYDRON® SE 220 は浸漬工程用一相タイプの水系洗浄剤です。リードフレーム、ディスクリート部品、パワーモジュール、パワーLED、フリップチップやCMOS といった各種の半導体パッケージからダイアタッチ時などに発生するフラックス残渣を除去します。一相構造のため、非常に工程管理がしやすく、マイクロエマルジョン効果を利用しているため良好なリンス性を示し、ワイヤボンディングやモールディングなどの後工程に最適な表面状態に仕上げることができます。中性のため、材料適合性にも優れています。

まとめ

今回得られた結果をもとに、弘輝様と引き続き、活性剤の残留影響に関する共同研究に取り組んでまいります。

 活性剤は、はんだ接合に不可欠な要素ですが、適切な洗浄が求められます。特に、水溶性フラックスは水での洗浄を前提に設計されていますが、低スタンドオフや狭ピッチの洗浄が必要な場合には、洗浄剤を使用することで、より確実な洗浄が可能です。そのため、製品に求められる清浄度に応じた適切な判断が重要となります。

また、清浄度の評価には、正確な分析が不可欠です。ゼストロンでは、フラックス洗浄のみならず、その分析手法を含めた包括的なサポートをご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

【共同研究:株式会社弘輝 様】

フラックス洗浄メーカーのゼストロンは、洗浄から分析までトータルでサポートいたします。

弊社では絶対的な洗浄性と化学的分析による清浄度評価を社訓としています

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【共同研究'24】弘輝 様

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弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

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