イオン残留量の検証
~フラックス種による相違~

【共同研究'23】日本スペリア社 様 x ゼストロンジャパン

おすすめ技術資料「イオン残渣の課題と分析方法」

  • そもそもイオンとは?
  • イオン残渣が引き起こす問題例
  • イオン残渣の分析手法 など
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困難さが増しているイオン残留課題イオン残留量と洗浄の関係性とは?

 エレクトロニクス市場はEV車やロボット・最新通信技術の研究開発がますます進んでおり、新たな接合技術であるシンターも本格的に量産稼働の動きが見えてくるなど、パワー半導体デバイスの勢いは衰えません。

 今回のテーマであるイオンはドーピング工程やはんだペースト中の活性剤などとして広く使用されており、電子デバイスにとっては不可欠な存在となります。また、最近の研究ではドーピング剤としてナトリウム・カリウムをイオン性物質として使用する新型半導体の研究も進められており、より活性力を高めた新たな活性剤の仕様も見受けられます。

 しかし、「意図しないイオン」すなわち残渣となりうるイオンは、はんだペースト中の活性剤だけではなく、使用される基材や作業環境由来のイオンも問題となりうる可能性があり、これらのイオンがデバイス表面・電極間・低スタンドオフに残留することでマイグレーションや腐食などの危険性を高め、その結果様々な不良を引き起こす事となります。要因としては高密度実装・大容量化(高電圧・大電流)に伴い絶縁性を確保する事がシビアとなり、以前は問題にならなかったわずかなイオン残留量でも影響が生じやすくなった事が挙げられます。また、イオン残渣は無色無形なものが多いため外観で判断することが大変困難であり、多くの場合マイグレーションなどの現象が生じてから判明するケースが多いです。

 

イオン残渣の影響を低減化させるため、活性剤量を抑制したはんだペースト/フラックスの開発や絶縁抵抗性を強化したコーティング剤の開発など、多岐に渡る対応策が検討されています。しかし、通例としてイオン残渣は水に溶けやすいので対策としては「洗浄」することが基本となります。

日本国内では無洗浄はんだペーストの使用が主流となっているため、多くの場合無洗浄タイプのフラックス残渣を洗浄する事となります。無洗浄タイプのフラックス残渣の経時安定性は非常に優れているため、高度な洗浄対応力が問われます。洗浄は見方を変えると安定化している残渣をあえて不安定化させる行為に他ならないので、完全な洗浄が出来ないと二次的な問題を引き起こすことに繋がります。

今回は3タイプ(無洗浄タイプ・洗浄タイプ及び水溶性フラックス)のフラックス種におけるイオン残留量にはどのような傾向が見られるのか、また水成分が主体の洗浄剤(ゼストロン製品 / VIGON® PE 305N)を使用して各種はんだペースト使用の基板洗浄を行うことでイオン残留量がどのように変化していくのかを検証するために、はんだメーカーである日本スペリア社様にご協力をいただきました。

技術資料DL / イオンとの共存共栄を目指す イオン残渣の課題と分析手法

イオン残留量の検証 
~フラックス種による相違~

評価用基板
無洗浄・洗浄タイプ  水溶性フラックスを使用 *基板は未洗浄品

  

 

洗浄条件
洗浄剤:VIGON® PE 305N         洗浄方式:スプレー
洗浄温度60℃                             洗浄時間:1~5分
IC分析条件:IPC-TM-650, method 2.3.28 B 準拠
マイクロスコープとFT-IR評価を併用して洗浄性を確認

分析結果

※イオン総量:アニオン・カチオン・有機酸の測定値を合算した数値を表記

 無洗浄タイプのフラックス

洗浄1分で外観上は洗浄が完結できたようにみえるが…
イオン残渣除去の観点では
洗浄途上!

イオン残渣評価は
外観評価だけでは不十分
洗浄前 洗浄後(1分) 洗浄後(3分)
外観上の差はないがイオン残渣量の差がある


 


表面張力の比較

  温度
(℃)
表面張力
(mN/m)
20 72.75
有機溶剤(トルエン) 20 28.4
ゼストロン水系洗浄剤
VIGON® PE 305N
25 35.4
⇒水系洗浄剤≒有機溶剤>水

 

NaClの溶解度比較

  温度
(℃)
NaClの溶解度
(g)
25 35.9
エタノール 25 0.15
⇒水はエタノールの約240倍

水溶性フラックス

イオン含有量がロジン系フラックスよりも多く、低スタンドオフ部の洗浄性も考慮するケースも多い。

理想的な洗浄液は?

  • 水溶性フラックスは元々含有イオン量が多く、低スタンドオフ洗浄時は注意が必要




    ⇒水は表面張力が大きく低スタンドオフ部の洗浄(液置換)が十分に行えない

  • 無洗浄タイプは洗浄タイプと比較し、イオン残渣除去には時間がかかる


    ⇒元来洗浄用として設計されていないフラックスのため、時間を要する

  • イオン残留量はゼロにする事は難しい
     
     

    ⇒イオンは搭載部品、基板由来のもの、環境要因による混入もあるので、
    フラックス残渣以外からも混入してしまう。相対量を低下させるために洗浄を行い、
    イオンの「ホットスポット」を生じさせない+問題のないレベルまで低減化させることが重要。


今回使用したVIGON® PE 305N は、パワーエレクトロニクス向けに開発された中性の水系洗浄剤で、水成分が主体の洗浄剤なので多くのイオンを溶解させることができます。また無洗浄タイプのフラックスを洗浄する際は、有機溶剤であっても溶解が困難となりがちなポリマ・高耐熱性物質を独自の MPC ®テクノロジーで効果的に剥離洗浄できたこともイオン量の低下に寄与しています。

【共同研究:日本スペリア社 様】

お問い合わせ VIGON® PE 305N 

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