長辺抵抗の洗浄性検証
長辺抵抗とは?
基板におけるチップ抵抗(レジスタ)において、電極が部品の長辺に配置されているタイプの抵抗を指します。
近年、高機能化と経時安定性を目的として使用されるケースが増加しています。
※角型抵抗との違いは?
角型抵抗は電極が部品の短辺に配置されているタイプの抵抗です。
▼長辺抵抗:1220

▼角型抵抗:2012

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メリット
- 接合部が大きい為、接合強度が高い ⇒接合強度に高い信頼性を得られる
- 温度変化に対して強く、放熱性が優れている ⇒高温環境下での使用や高電力に対応できる
デメリット
- コスト高
- 実装デザインの制約
- 洗浄が困難な場合が多い
1. はんだ使用量が多い為、比例してフラックス量も多い
2. 部品下部における洗浄剤の通り道に制約がある
長辺抵抗の低スタンドオフは「狭く」「低く」「長い」
⇒一般的な角型抵抗と比較し、長辺タイプの場合は開口部の間口が狭くなり、細長い低スタンドオフを形成し、洗浄難度は高くなります。
▼長辺抵抗⇒長細いトンネル形状

▼狭く・低く・長い⇒ 渋滞が起きやすい環境⇒洗浄剤が流入しにくく液置換性が得らにくい

長辺抵抗の洗浄検証
今回、汎用的な角型抵抗(2012)と長辺抵抗(1220)を使用したテスト基板を作成し、水成分を主体とした洗浄剤(ゼストロン製/ VIGON® PE 304N)と有機アルカリ主体の汎用溶剤系洗浄剤を使用し、基板洗浄を実施しました。この検証には、はんだメーカー様である日本スペリア社様のご協力をいただき、両抵抗の洗浄性の比較を行い詳細に分析しました。
<評価用基板>
▼角型抵抗2012
▼長辺抵抗1220
<評価条件>
洗浄剤 | 濃度 | 温度 | 洗浄工法 |
---|---|---|---|
VIGON® PE 304N |
15% | 65℃ | スプレー・超音波 |
汎用溶剤系洗浄剤 < 有機アルカリ主体> |
100% | 55℃ |
超音波 |
はんだペースト:SN97C P608 D4 (日本スペリア社製 / 無洗浄タイプ)
洗浄剤:VIGON® PE 304N 洗浄工法:スプレー
角型抵抗(2012) | 長辺抵抗(1220) | |
---|---|---|
未洗浄 | ![]() |
![]() |
洗浄 2.5分 |
洗浄完了 |
洗浄途上 |
洗浄 5分 | ー |
洗浄完了 |
洗浄に必要な時間・・・角型抵抗⇒2.5分 , 長辺抵抗⇒5分
⇒スプレー方式は液置換性が良好なため、洗浄の進行は スプレー>超音波
撮影条件
型式:VHX-8000 倍率:×100倍(連結撮影) 使用光:同軸光
※通常光では薄膜残渣の有無判定が困難な為、同軸光を使用
長辺抵抗の洗浄性:清浄度の最終確認【SEMーEDS分析】
洗浄剤:VIGON® PE 304N 洗浄工法:スプレー
未洗浄 | 超音波 (洗浄:5分) |
スプレー (洗浄:5分) |
|
---|---|---|---|
"C"の分布 -フラックス |
![]() |
![]() |
![]() |
“Ba”の分布 -基板 |
|
|
|
未洗浄:“C”、“Ba”が不均一に分布 ⇒ 表面に残渣があるため不均衡化
超音波・スプレー: “C”、“Ba”が均一に分布 ⇒ 表面に残渣なし
洗浄剤:溶剤系洗浄剤 洗浄工法:超音波 洗浄時間:10分
5kV | 15kV | |
"Sn"の分布 | ![]() |
![]() |
【元素分析の結果】
明らかに残渣部はSnの割合が多く、Sn塩の残留が考えられる
⇒溶剤系洗浄剤では金属塩の除去効果は限定的となる傾向が見受けられる
【分析条件】
型式: JSN-IT710HR/LA ・ 入射電圧: 5.0~15.0kV
水系洗浄剤 「VIGON® PE 304N」とは?
評価に使用した洗浄剤VIGON® PE 304Nは、高信頼性、高耐熱性はんだペーストの場合でも、高い洗浄性を発揮し、適切な工法を選択する事で長辺抵抗のような変則的な低スタンドオフ洗浄にも優れた効果を発揮します。また、ワイヤボンディング・モールディングなどの次工程に適した表面を形成します。



洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。