洗浄剤の法令遵守と安全対応
近年では、環境保全や人的保護の観点から、各国で化学物質の取り扱いに関する法令規制が強化されると共に、世界的な風潮としてSDGs(Sustainable Development Goals)への取り組みが進んでいます。
日本でも2024年4月より安全衛生法が改定され、化学物質の取り扱いが強化されています。作業者の健康リスクや環境負荷を低減化するため、企業によっては環境負荷が大きい部材は調達しないといった動きも見られており、洗浄剤も例外ではありません。
海外での取り組みも踏まえて、洗浄剤に関わる法規制を紹介します。
目次
1. 洗浄剤に関係する法令や規則
1.1 洗浄剤を購入
1.1.1 PRTR制度
1.2 洗浄剤を使用
1.2.1 労働安全衛生法
1.2.2 大気汚染防止法(VOC規制)
1.2.3 水質汚濁防止法
1.3 洗浄剤を保管
1.3.1 消防法
1.4 洗浄剤を購入・使用・保管
1.4.1 毒物及び劇物取締法(毒劇法)
1.4.2 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
2 世界各国の法令規制
2.1 各国の洗浄事情
2.1.1 EU
2.1.2 中国
2.1.3 マレーシア
2.1.4 アメリカ
2.2 各国の法令規制による日本への影響
3. ゼストロンの洗浄剤
3.1 有機溶剤系洗浄剤から水系洗浄剤への代替事例
3.2 水系洗浄剤 製品例
4. 関連ページ・資料
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洗浄剤に関係する法令や規則
洗浄剤を取り扱う際の法令や規則は多数あり、洗浄剤を購入・使用・保管する様々なステップに応じた各事項に留意しなくてはなりません。
各ステップでどの法令・規制に気を付けるべきか解説いたします。
※毒物及び劇物取締法(毒劇法)と化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)は全てのステップ(購入・使用・保管)で注意が必要
1 | 洗浄剤を購入
PRTR制度
概要・目的
PRTR制度は、Pollutant Release and Transfer Register(環境汚染物質排出・移動登録)の略称で、有害な化学物質が事業所から環境へ排出される量や廃棄物として外部に移動する量を、事業者が自己申告し、国が集計・公表する制度です。
この制度は、人の健康や生態系への影響を評価し、環境への影響を最小限に抑えるために導入されました。化学物質の排出や移動量を把握することで、環境保全に貢献しています。
気を付けるべきポイント
- PRTR法の対象となる化学物質は、『第一種指定化学物質』と『第二種指定化学物質』の2つに区分されています。
-
『第一種指定化学物質(トルエン・キシレン・ジクロロメタンなど)』を製造したり、使用したりしている事業者のうち、製造業や金属鉱業、原油及び天然ガス鉱業などの業種で、常用雇用者21人以上かつ、第一種指定化学物質のいずれかを1年間に1t以上(特定第一種指定化学物質については0.5t以上)取り扱う事業所を有するなどの要件を満たす事業者は、排出量や移動量の届出義務があります。
2 | 洗浄剤を使用
労働安全衛生法
概要・目的
労働安全衛生法は、労働災害の防止や職場環境の改善に取り組む法律です。「職場における労働者の安全と健康を確保する」ことと、「快適な職場環境の形成を促進する」ことを目的としています。
直近では2024年に改正され、ラベル表示・通知をしなければならない化学物質の追加等が行われました。
<57条>
対象となる物質(リスクアセスメント対象物※1)において、ラベル表示、安全データシート(SDS)等による通知とリスクアセスメント実施が義務付けられています。
2024年に改正されたことにより、リスクアセスメント対象物に、国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質を順次追加されていくことになりました。
※1 リスクアセスメント対象物:労働安全衛生法第57条の3でリスクアセスメントの実施が義務付けられている危険・有害物質
気を付けるべきポイント
- 可能な限り、洗浄剤を導入する前にラベルやSDSより、危険有害性を確認しましょう。
- 危険有害性に応じたリスクアセスメントを行いましょう。
洗浄剤(SMT実装工程向けや半導体向けなど)に関連するGHS絵表示例 | ||
感嘆符 |
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健康有害性 |
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環境 |
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炎 |
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フラックス洗浄に関連するアセスメント対象物質
【エチレングリコール類】
エチレングリコールジエチルエーテル
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル
エチレングリコールモノエチルエーテル
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル
エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート
エチレングリコールモノメチルエーテル
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【アルコール類】
エタノール メタノール
【ケトン類】
メチルエチルケトン(MEK) アセトン
【炭化水素系】
トルエン・キシレン
【ハロゲン系溶剤】
ジクロロメタン(塩化メチレン) 1-ブロモプロパン(アブゾール) など
グリコールエーテル系物質の取り扱い規制強化の背景
フラックス洗浄におけるグリコールエーテル系物質は「基幹成分」と言っても過言ではありません。
しかし、上記に示すように種類によっては体内代謝により毒性が強く残留しやすい物質に変化する事で、様々な健康被害をもたらす懸念があります。国際的な規制強化の流れもあり、取り扱いが厳しくなっています。
洗浄剤メーカーは毒性が低減化できるようなグリコールエーテルの使用や代替え物質への切替対応を進めています。
<有機溶剤中毒予防規制(有機則)>
有機則は、労働安全衛生法及びその施行令に基づき、有機溶剤による健康被害を防ぐために定められた法規です。
有機則の対象となる有機溶剤は、その有害性に応じて3種類に区分されており、その毒性と蒸発速度から有害度を決定し、有害度の高いものが第1種有機溶剤に、中程度のものが第2種有機溶剤に、低度のものが第3種有機溶剤に区分されています。
気を付けるべきポイント
-
使用する有機溶剤等の危険有害性の確認と周知: SDSから危険有害性を確認し、必要な対策を講じましょう。
-
掲示と保管:作業主任者の氏名・職務、有機溶剤が人体に及ぼす作用等、取扱う有機溶剤等の区分の表示などを、作業中でも容易に分かるよう見やすい場所に掲示しましょう。
-
健康管理:半年に1回、定期的に健康診断を実施しましょう。
-
フラックス洗浄を目的として使用される有規則の対象物質
フラックス洗浄剤での使用頻度が高い物質
エチレングリコールモノエチルエーテル
エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
エチレングリコールモノメチルエーテル
単独成分で洗浄剤として使用されるケースが多い物質
イソプロピルアルコール(IPA)
アセトン
トルエン
ノルマルヘキサン
メチルエチルケトン(MEK)
大気汚染防止法(VOC規制)
概要・目的
大気汚染防止法は、工場や事業場の活動や建築物の解体に伴う排出物の規制を通じて、大気汚染の防止と国民の健康保護を図ることを目的としています。
VOC(揮発性有機化合物)の法規制対象施設の中で、特にVOCの排出量が多いと考えられる代表的な施設の一例として、「工業用洗浄施設および洗浄後の乾燥施設」が挙げられます。
気を付けるべきポイント
- 工業の用に供する揮発性有機化合物による洗浄施設であり、空気に接する洗浄面の面積が5m2以上となる場合は法規制対象となり、排出基準値400ppmCを守らなくてはいけません。
- 法規制対象施設においては、施設の届出、排出濃度の測定、排出基準の遵守の3点を行う必要があります。
- 関連する規制として「上乗せ排出基準」があり、地域によってより厳しい基準が定められています。
- 作業現場や洗浄機から排気を行った後、適切な処理(スクラバー処理/吸着処理)を行ってから大気放出する事が求められています。
▼フラックス洗浄時の排気処理
湿式方式での処理が一般的
▼家庭用の空気清浄機
活性炭吸着 プラズマなどによる電気的作用で分解(乾式方式での処理)
水質汚濁防止法
概要・目的
水質汚濁防止法は、工場や事業場からの水の排出や地下水への浸透を規制し、公共用水域や地下水の水質汚濁を防止することを主な目的としています。この法律は、水質の悪化を防ぎ、国民の健康を保護すると同時に、生活環境を維持することを目指しています。
気を付けるべきポイント
- 「工場又は事業場」から「公共用水域」に水を排出する者は、設置届を届け出する必要があります。
- 「特定施設※2」を設置する「工場又は事業場」において、対象となる排水規制物質(ジクロロメタンなど)を排出する場合は規制の対象となります。
- 公共用水域へ排出する特定事業場※3の全ての排水口の水において測定義務があります。
- 関連する規制として「上乗せ排水基準」があり、地域によってより厳しい基準が定められています。
-
使用済みのフラックス洗浄剤を河川放流するのは論外ですが、使用済みのリンス水であってもBOC・COD・pH・含有イオン量の規定がありますので該当地域の規制値を確認し、法令を厳守しましょう。
※2 特定施設:「汚水又は廃液」を排出する施設かつ「政令」で定める施設のこと。
(特定施設一覧:https://www.env.go.jp/council/content/i_07/900428967.pdf)
※3 特定事業場:「特定施設」を設置する「工場又は事業場」のこと。
3 | 洗浄剤を保管
消防法
概要・目的
消防法は、火災を予防し、警戒し、鎮圧することを主な目的としています。これに加えて、国民の生命、身体、財産を火災から保護することや、火災や地震などの災害による被害を最小限に抑えることも重要な目標とされています。
消防法では、火災発生の危険性が大きいものや火災拡大の危険性が大きいもの、消火の困難性が高いものを危険物と定めており、第一類~第六類まで種別が分かれています。
気を付けるべきポイント
- 産業用洗浄剤の中には、第四類「引火性液体」に該当するものもあるので気を付けましょう。フラックス洗浄剤はこの第四類に該当するかどうかによって保管方法に大きな相違点が生じます。
- 引火点により保管できる数量(指定数量)が決まっています。指定数量は、危険物の種類やその危険性などを考慮して定められており、保管場所の設置や設置条件を満たす必要があります。
- 仮に定められた指定数量以上の危険物の貯蔵や取扱う場合は、市町村等の許可を受けた施設で、政令で定められた技術上の基準に則って行わなくてはなりません。
危険物の区分
区分 | 引火点(℃) | 水溶性/非水溶性 | 指定数量(L) | 主な洗浄剤 |
---|---|---|---|---|
特殊引火物 | ※4 | - | 50 | ナフサ・メチルエーテル |
第一石油類 | 21未満 | 非水溶性 | 200 | トルエン・MEK |
水溶性 | 400 | アセトン | ||
アルコール類 | ※5 23未満 | - | 400 | メタノール・IPA |
第二石油類 | 21≦X≦70 | 非水溶性 | 1000 | キシレン |
水溶性 | 2000 | |||
第三石油類 | 70≦X≦200 | 非水溶性 | 2000 | |
水溶性 | 4000 | |||
第四石油類 | 200≦X≦250 | - | 6000 | |
動植物石油類 | 250未満 | - | 10000 |
※4 沸点が40℃以下、もしくは発火点が100℃以下のもの
※5 アルコールの構造を有するもの [C-OH]
指定数量と保管制約
例1:IPAを一斗缶(15L)で購入した場合の指定数量倍数
IPA(アルコール類) 指定数量:400L
缶数 | 保管量(L) | 倍数 | |
---|---|---|---|
1 | 15 | 0.0375 | |
5 | 75 | 0.1875 | |
6 | 90 | 0.225 | 届出必要 |
10 | 150 | 0.375 | |
15 | 225 | 0.5625 | |
20 | 300 | 0.75 | |
26 | 390 | 0.975 | |
27 | 405 | 1.0125 | 承認必要 |
30 | 450 | 1.125 |
例2:第二石油類(非水)を使用する洗浄機の指定数量倍数
⇒指定数量:1000L
保管量(L) | 倍数 | |
---|---|---|
50 | 0.05 | |
100 | 0.1 | |
200 | 0.2 | 届出必要 |
300 | 0.3 | |
400 | 0.4 | |
500 | 0.5 | |
700 | 0.7 | |
800 | 0.8 | |
1000 | 1 | 承認必要 |
4 | 洗浄剤を購入・使用・保管
毒物及び劇物取締法(毒劇法)
概要・目的
毒物及び劇物取締法は、急性毒性による健康被害が高い化学物質を毒物又は劇物に指定し、保健衛生上の観点から必要な規制を行うことを目的としています。
気を付けるべきポイント
- 毒物又は劇物に指定されるものは、貯蔵庫にて他のものと区別できるよう保管し、貯蔵庫には「医薬用外毒物」又は「医薬用外劇物」の表示をしましょう。
→法令で貯蔵庫には「施錠」が義務化されています。 - 廃棄する際は、政令で定める技術上の基準に従って廃棄しましょう。
- 毒物劇物が飛散、漏洩等した場合において、不特定多数に保健衛生上の危害が発生する恐れがある時には、直ちに保健所、警察署又は消防機関に届け出る必要があります。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
概要・目的
化審法は、環境汚染による健康被害や生物への影響を防止することを目的としています。化審法は、新たに製造や輸入される化学物質について事前に人への有害性を審査し、環境を経由して人の健康に悪影響を及ぼす化学物質の製造、輸入、使用を規制する仕組みを提供しています。
直近ですと2023年に改正され、「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」の第一種特定化学物質への指定等が行われました。
気を付けるべきポイント
- 洗浄剤の中には化審法でいう『優先評価化学物質』に該当するものがあり(例:IPA)、使用する場合は、「人又は生活環境動植物への被害を生ずるおそれがないと認められないもの」ということを留意しましょう。
いずれも、2024年5月30日時点の法令・規制に関する情報です。また、本ページで記載している気を付けるべきポイントはあくまで一例です。洗浄剤を正しく購入・使用・保管するために、最新情報は各省庁・都道府県・市町村・消防署にご確認いただけますようお願いいたします。
世界各国の法令規制
各国の洗浄事情
日本 | ヨーロッパ | アジア諸国 | アメリカ | |
無洗浄化が顕著 |
環境負荷低減への第一人者 |
化学物質の取締強化 |
水溶性フラックスの活用 |
日本は諸外国と比べ、洗浄について独自の道を歩んできており、はんだ・コーティング技術を進化させることで、無洗浄技術が格段に向上しています。また、今までは環境・労働環境保全より産業奨励を優先させる傾向があり、諸外国よりも有機溶剤を取り扱う機会が多いのが実情です。
しかし前述しましたように近年は、環境保全や人的保護の観点から、SDGs(Sustainable Development Goals)への取り組みが進み、その流れの一環として日本でも2024年4月より安全衛生法が改定され、化学物質の取り扱いが厳正化され、企業によっては環境負荷が大きい素材は調達しないといった動きも見られています。
各国での取り組みを紹介しながら、日本との比較も解説します。
EU
区分 | 消費量 (トン/年) |
排ガス中の排出規制値 (mg/m3)※標準状態下 |
溶剤投入量に 対する損失割合(%) |
---|---|---|---|
特定の化合物を |
1~5 | 20 | 15 |
5以上 | 20 | 10 | |
*その他の表面洗浄 | 2~10 | 75 | 20 |
10以上 | 75 | 15 |
*洗浄分野における域値と排出規制値(EU広域規制)
[DIRECTIVE 2010/75/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 24 November 2010]
第59条(5)に該当する物質 危険有害性情報のコード
H340:遺伝性疾患の恐れ H341:遺伝性疾患の恐れの疑い H350:発がん性の恐れ
H351:発がんの恐れの疑い H360:生殖能または胎児への悪影響の恐れ
量産レベルでの洗浄剤使用にあたり、かなり厳しい規定が設けられており、該当有機物質の排出基準は1 m3あたり数十mgといったレベルでの制御が要求されています。
ここまで高性能な処理設備の導入・維持管理を考えると高コストとなることは避けられず、実質的な使用抑制にあたる内容です。
一方で、使用する洗浄剤の有機溶剤含有量が30%未満であり、所轄官庁の認定を受ければ免除規定も設けられているので、EU圏では水を第1成分とした洗浄剤が多く開発され、流通しています。
中国
項目 | 規制値 | ||
溶剤系 | 準水系 | 水系 | |
2023年 VOC含有量(g/L) | 850以下 | 250以下 | 50以下 |
2024年(草案) VOC含有量(g/L) | 800以下 | 100以下 | 25以下 |
*中国国家標準(GB) 中国生体環境部(MEE)より発出された洗浄剤への規定
[GB38508-2020:洗浄剤中の揮発性有機化合物含有量の制限値]
中国で操業する企業は当局からの指導や管理措置の厳しさから「水系」「準水系」区分に相当する洗浄剤でフラックス洗浄を行うのが通例となっています。
仮に「準水系」の区分となるVOC 250 g/L相当を達成するのであれば、使用時における洗浄剤中の水の含有量は80%程とならないと「準水系」区分の洗浄剤とはなりません。
日系企業の中国における課題として、日本で使用している洗浄剤が中国現地で使用が困難となり、ワーストケースの場合、通関することができなかったなどの事例が生じています。
今後も順次規制は強化される見通しで多くの企業は洗浄体制の見直しを迫られています。
中国において汎用の有機溶剤を使用した洗浄剤の使用は、より困難となる見込みです。
マレーシア
1974年に制定された「環境品質法[ENVIRONMENTAL QUALITY ACT, 1974] 」が基軸となり、様々な環境規制が強化されています。
特にマレーシア政府は水質環境に力を入れて取り組んでおり、規制内容は日本の水質関連法律である「水質汚濁防止法」と比較しても厳しいものとなっています。
企業や工場を設立するにあたり、環境負荷が懸念される事業の場合は、審査が必要となり事前に環境対策のプランが求められます。
また、設備の新設における「審査・登録」のハードルはかなり高く、入念な事業計画が必要です。
欧米系半導体企業も数多く進出しており、企業間での環境保護の取り組みが盛んな地域となっています。
2009年の環境品質(産業排水)規制
規制項目 | 条件A (集水域) |
条件B (国土内) |
水質汚濁防止法 (日本) |
---|---|---|---|
温度 | 40℃ | 40℃ | 規定なし |
pH | 6.0~9.0 | 5.5~9.0 | 5.8~8.6(公共水域) 5.0~9.0(海域) |
BOD | 20 mg/L | 40 mg/L | 160 mg/L (日間平均 120 mg/L) |
浮遊物質量(SS) | 50 mg/L | 100 mg/L | 200 mg/L (日間平均 150 mg/L) |
窒素含有量 | 10 mg/L (アンモニア性窒素) |
20 mg/L (アンモニア性窒素) |
120 mg/L (日間平均 60 mg/L) |
*水質汚濁防止法はこの表に掲げる排水基準は、1日当たりの平均的な排出水の量が50 m3以上である工場又は事業場に係る排出水について適用する⇒都道府県条例での規定がより厳しく設定されております(上乗せ排水基準)。
アメリカ
政府のVOC規制はEPA(Environmental Protection Agency)が制定しており、州・各地区に追加規制の権利行使権が認められています。
厳しい事例としては、カリフォルニア州南部の規制(South Coast AQMD)が挙げられます。オゾン層保護の活動が活発であり、ハロゲン系洗浄剤使用を避ける傾向があります。また、環境規制に対する罰則(制裁金)はかなりの高額で化学物質取扱の抑止力となっており、作業環境による訴訟も比較的行いやすい社会的風潮があります。このため、多くの企業は環境保全と安全対策のため、高額な設備投資を行っても法令に準拠できるように努めています。
South Coast AQMD (Air Quality Management District)の規定
1. VOC 濃度は1Lあたり 25 g以下
2. 合成蒸気圧は、20℃でVOCが5mmHg以下
3. 反応性がトルエンより高くないこと
4. 連邦大気浄化法で有害大気汚染物質(HAP)に分類される化合物、オゾン層破壊化合物(ODC)、地球温暖化化合物(GWC)を含まない
*HAPにはメタノール・エタノール・プロピレングリコール・汎用炭化水素等の記載があり、日本で使用されている多くの有機溶剤が該当
規定が上記のように厳しいため、有機溶剤によるフラックス洗浄は不可能であり、対応できる洗浄剤は限られています。
その他にも下記のような規制や機関があります。
- TSCA(Toxic Substances Control Act):有害物質規制法
⇒作業で取り扱う化学物質の登録が義務化されている - OSHA (Occupational Safety and Health Administration):労働安全衛生局
⇒保護具の規定や作業環境の保全を管轄
いずれも、2024年5月30日時点の法令・規制に関する情報です。
各国の法令規制による日本への影響
日本では多くの製品が未洗浄で処理されるor有機溶剤が主体の洗浄のケースが多く、洗浄技術・情報の蓄積が薄くなり、諸外国との相違があります。
そのため、下記のような様々な影響が出ています。
- 環境負荷の大きい洗浄剤はそもそも海外で輸入通関できないので、海外での工場で使用できない
- 洗浄を前提に製品設計されていないので、いざ洗浄が必要になった際に、洗浄で傷んでしまう部材も多く、より洗浄を困難としている
このようなケースを解決するためには、海外の法規制に準拠した洗浄剤への変更や、有機溶剤のようなアタック性が強い洗浄剤から代替することが必要です。
ゼストロンの洗浄剤
ゼストロンは環境意識の高いドイツの洗浄剤メーカーであり、45年以上に渡って安全面と環境面に配慮した水系洗浄剤の開発に取り組んできました。
各種法令対応、安全性の高い洗浄剤への代替相談はぜひゼストロンにご相談ください。
水が8割以上の水系洗浄剤
ゼストロンの水系洗浄剤は大半を水が占めており、水以外の化学物質もより安全性の高いものを使用しております。
そのため、引火性がなく安全面・環境面に配慮された洗浄剤です。
低VOC・非危険物を目指して洗浄剤を開発
ゼストロンの本社があるドイツは、世界でも有数の環境立国で、世界各国の法令規制でもお伝えした通り、可能な限り環境に配慮した生産活動を行うように取り組んでいます。
そのため、低VOC・非危険物であることが開発コンセプトであり、海外における法規制に準拠しているため、安心してご使用いただけます。また、直近ではバイオマスに則した原材料を使用した洗浄剤の開発にも取り組んでおります。
有機溶剤系洗浄剤から水系洗浄剤への代替事例
強力な洗浄力を有する有機溶剤系洗浄剤であっても、課題となりがちな低スタンドオフ洗浄は難解であるケースが多く見受けられます。弊社では単に環境・人的負荷の軽減を目的とした水系洗浄剤ではなく、有機溶剤系洗浄にも劣らない洗浄性能を併せ持つ事が特徴です。
水系洗浄剤(VIGON® PE 180)×スプレー方式を用いる事で、不良がゼロになるだけでなく、洗浄時間の短縮や工場全体のVOC削減にも貢献することができました。
洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。