フラックス洗浄とは?必要性・方法・選定ポイントをわかりやすく解説

現代のエレクトロニクス製品の信頼性を高める上で、電子デバイスのはんだ付け工程は極めて重要です。このはんだ付けを円滑に進め、高品質な接合を実現するために欠かせないのが「フラックス」です。
しかし、フラックスはその役割を終えた後もデバイス上に残留すると、絶縁不良や腐食、さらには製品故障の原因となることがあります。そこで、製品の品質と信頼性を確保するために不可欠となるのがフラックス洗浄です。

本記事では、フラックス洗浄とは何か、なぜフラックス洗浄が必要なのか、そして具体的な洗浄方法など、フラックス洗浄に関するあらゆる情報を解説します。


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  • フラックス洗浄 / 洗浄が求められる分野とは?
  • 洗浄剤の種類と選定方法(水系洗浄剤・溶剤系洗浄剤)
  • 洗浄方式の種類と選定方法(スプレー・超音波・噴流)
  • 残渣評価(分析)の目的や手法)
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1. フラックス洗浄とは?

フラックス洗浄とはそもそも『洗浄』とは、ワーク(洗う物)表面に存在している物質のうち、除去したい物質を選択的に取り除くことを目的とした行為のことです。
つまりフラックス洗浄とは、プリント基板やパワーモジュール、半導体パッケージ、リードフレームなどを保護しながらフラックス残渣(コンタミ)を除去することを意味します。
ちなみに、ワーク表面も含め除去対象となる場合、選択性のないものは一般的に『エッチング』に分類されます。
(例:金属の酸洗い・処理)

洗浄前
洗浄後


2. フラックス洗浄はなぜ必要なのか?

自動車、航空宇宙、通信といった分野では高い信頼性が要求されるため、品質確保の観点からフラックス洗浄が必要とされるケースがあります。さらに、近年のIoTや自動運転技術の進展に伴い、洗浄の重要性は年々高まっています。

加えて、今後洗浄需要の拡大が見込まれる分野として、世界的に注目されているAIが挙げられます。DX化が進む現代において不可欠な技術であるAIにおいても、自律的な判断を正確に行うためには、構成部材の高い清浄度が求められます。

自動車分野
  • トランスミッション制御
  • パワーステアリング
  • 電子制御
    - センサー
    - 制御
    - モニタリング
医療機器
  • ペースメーカー
  • MRI, X線機器
  • 人工呼吸器
航空・宇宙
  • レーダー監視
  • 航空機のエンジン制御
  • 衛星制御
通信機器
スマートフォンとウェアラブルデバイス
  • スマートフォン
  • スマートウォッチ
再生エネルギー
  • 電圧変換
    (直流 / 交流)

フラックス残渣がデバイスに残留してしまうと、

などの不具合が起きる可能性があります。 

エレクトロケミカルマイグレーションの発生
エレクトロケミカルマイグレーションの発生
プリント基板上に腐食
プリント基板上の腐食
コーティング下のイオンマイグレーション
コーティング下でのデンドリマー成長
樹脂コーティング下で結露が発生
部品下でのぬれ不良発生

フラックス洗浄を実施する際に主に検討しなくてはいけないのが、

  • 洗浄剤

  • 洗浄方式

  • 洗浄機

  • 洗浄工程

の組み合わせです。

例えば、洗濯をする時も、洗剤だけ、もしくは洗濯機だけだと十分に汚れが落ちないことがあります。
洗剤と洗濯機を組み合わせることで、十分な効果が発揮されます。
また、洗濯機でスタートボタンを押す前に、洗浄時間をどのくらいにするのか?すすぎは何回?温水でする?など設定をする必要があります。

フラックス洗浄も同じように洗浄剤・洗浄方式・洗浄機・洗浄工程を組み合わせることが大事で、ワークに合わせて選定する必要があります。
洗浄剤・洗浄方式・洗浄機・洗浄工程について解説します。

3.1 フラックス洗浄剤の種類

洗浄剤は大きく分類すると「水系」「準水系」「溶剤系」に分別されます。

 

 

溶剤系 準水系 水系
有機溶剤が主体の洗浄剤 水の含有率が約50%の洗浄剤 水が主成分を占める洗浄剤
アルコール系
炭化水素系
ハロゲン系 など
有機溶剤+水のブレンド品
⇒アルコール+水
 グリコールエーテル+水 など
無機・有機塩基を用いたもの
⇒アルカリ水系
界面活性剤系
純水洗浄

 


フラックス洗浄剤についてより詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。
フラックス洗浄剤の種類と選定方法
失敗しない!フラックス洗浄剤の選び方

3.2 フラックス洗浄方式の種類と選定方法

フラックス洗浄で、代表的な方式はスプレー(シャワー) ・超音波・噴流です。
他にもコ・ソルベントや真空、遠心分離などの方法があります。
今回は代表的な3つの方式についてご紹介します。

 

 

スプレー(シャワー)

超音波

噴流

メリット
  • 一定の物理力を得られる
  • 物理力の調整が容易
  • 液置換性に優れる
  • 微細な部分までの洗浄効果が大きい
  • 出力調整により物理力の調整可能
  • 一定の物理力が得られる
  • ワークに対しての影響が軽微
デメリット
  • 角度や形状の調整が不可欠
  • 部材に対してもアタック
  • 液音制御が必要となる
  • 超音波で破壊される部品あり
  • よどみは発生しやすく、細部までの洗浄が困難

3.3 フラックス洗浄機とその特徴

インラインやバッチ式などフラックス洗浄機には、それぞれ適した用途や特徴があります。
洗浄の目的や要求される清浄度、材料適合性、生産量などを総合的に考慮し、最適な装置を選定することが重要です。

インライン洗浄機
特徴
メリット
  • 洗浄から乾燥までを自動連続処理でき、大量生産(量産ライン)に最適
  • 品質のばらつきを抑制しやすい
  • 工程の標準化・ライン統合が可能で、生産効率の向上に寄与
主な洗浄方式 スプレー洗浄
注意点 設備が大型になりやすく、一定のスペースが必要

 

バッチ式洗浄機
特徴
メリット
  • 多品種・小ロット生産に柔軟に対応
  • 装置が比較的コンパクトで、省スペースで導入可能
主な洗浄方式
  • スプレー洗浄
  • 超音波
  • 噴流
注意点
  • 処理がバッチ単位のため、生産量が多い場合は処理時間がボトルネックになる可能性
  • 動作機構によって品質のばらつきが出る可能性

 


フラックス洗浄方式フラックス洗浄機ついてより詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。
フラックス洗浄方式の種類と選定方法
スプレー(シャワー)洗浄とは?スプレー洗浄の重要性とメリット

3.4 フラックス洗浄工程

洗浄工程は『洗浄』『リンス』『乾燥』の3要素からなっており、普段の洗濯も同じ流れで行っています。

フラックス洗浄もそれぞれの要素ごとに検討することがポイントです。

▼洗浄プロセスの3大要素

洗浄工程は『洗浄』『リンス』『乾燥』の3要素からなっており、普段の洗濯も同じ流れで行っています。  フラックス洗浄もそれぞれの要素ごとに検討することがポイントです。

1 | 洗浄・リンス工程の検討

洗浄工程・リンス工程を構築する上で検討する項目は、以下の5つです。

  • 洗浄剤・・・水系 / 溶剤系

  • 洗浄方式・・・超音波 / スプレー / シャワー/ 噴流

  • 温度・・・動熱費との兼ね合い / 安全面(洗浄剤が危険物の場合、安全面の観点から加温が制限される)
    ※加温することで洗浄性・リンス性はアップします。(溶解度が上昇する傾向にあるため)しかし、加温に関しては上記の点にも気を付ける必要があります。

  • 時間・・・生産スピードに見合う速度 / 確実に洗浄ができる時間

  • 部材適合性・・・洗浄力 / 部材へのダメージ
    ※洗浄時間数の最低10倍の時間で浸漬し、影響がないことを試験する
    ※洗浄力が強力⇒素材に与えるダメージも強力

導入するまでには、様々なパラメーター設定をしテストを行うことをおすすめします。

2 | 乾燥工程の検討

乾燥手法は真空乾燥温風乾燥の2種に大別されます。
生産タクト・コストの観点から温風乾燥の手法を取ることが多いです。

  メリット デメリット
真空乾燥
  • 気化させやすい
  • 細部まで乾きやすい
  • 減圧、解放にかかる時間
    ⇒連続した作業には適さない
  • 真空乾燥だけでは気化しきらないこともあり、続けて温風乾燥が必要になるケースもある
温風乾燥
  • 送風により置換効果がある
  • 連続処理が可能
  • 動熱費用が高い送風により置換効果があ
  • 大きな水の塊は乾燥させにくい
    ⇒前段の液切りが必要

 

真空乾燥は減圧の必要性があるため時間がかかってしまいますが、狭い空間の乾燥性に優れ、複雑なパッケージ部品や多層化したワークに用いられることがあります。


4. フラックス洗浄事例

近年の電子デバイスは高密度実装化が進み、フラックス洗浄の難易度は高まっています。
特に低スタンドオフ部では、洗浄液の浸透・置換が困難であることに加え、難溶性物質を含む残渣の影響により、高い洗浄性能が求められます。

本事例では、こうした条件下において、低スタンドオフ部および難溶性残渣に対する各種洗浄剤の洗浄性を比較・検証しました。

耐熱性強化型ハロゲンフリーのはんだペーストを使用して実装した基板
洗浄前

【サンプル基板の仕様】

はんだペースト
 耐熱性強化型ハロゲンフリー

評価対象
 3216コンデンサ
 低スタンドオフ高さ20µm

洗浄後

VIGON® PE 305Nにて難溶性物質含有のフラックス残渣を洗浄した後
ゼストロンフラックス洗浄剤
アルコール系洗浄剤
ハロゲン系溶剤にて難溶性物質含有のフラックス残渣を洗浄した後
ハロゲン系溶剤

アルコール系洗浄剤やハロゲン系溶剤と比較した結果、ゼストロンのフラックス洗浄剤は、難溶性物質を含むフラックス残渣に対しても、低スタンドオフ部において高い洗浄性能を発揮しました。
ゼストロンフラックス洗浄剤(VIGON® PE 305N)については下記ページをご覧ください。
耐熱性 難溶性物質含有 フラックス残渣除去性能をより強化!

<洗浄方法・条件>
ゼストロンフラックス洗浄剤(VIGON® PE 305N)
洗浄方法:スプレー、洗浄条件:洗浄液濃度 15%・温度 65℃・時間 10分

アルコール系洗浄剤、ハロゲン系溶剤
洗浄方法:超音波、洗浄条件:洗浄液濃度 100%・温度 65℃・時間 10分


ワークの種類によって最適な洗浄剤や洗浄方式、洗浄工程は変わってきます。

テクニカルセンターには、インライン・バッチ式のスプレーや噴流、超音波装置をご用意しておりますので、弊社エンジニアよりお客様のワークに合った洗浄プロセスを見つけるサポートをいたします。

また、洗浄テストと並行しながら分析センターにて清浄度を分析し、テスト終了後には、推奨プロセスなどの詳細を記載したテクニカルレポートを提出させて頂きます。

洗浄テストをご希望の方は、下記の【洗浄テストの依頼をする】よりお申込みください。

インライン式スプレー洗浄機にて洗浄テストを実施
テクニカルセンター

ゼストロンでは、半導体・エレクトロニクス業界向け洗浄剤や工程管理向けの製品を提供しております

ゼストロンでは、フラックス洗浄に特化した約30種類の洗浄剤をご用意しています。

各洗浄剤は単なる汎用品ではなく、フラックスの特性やデバイスの種類、洗浄方式に応じて開発されています。そのため、お客様のワークや用途に応じた最適な洗浄剤をご提案可能です。

下記の製品検索より、お客様のワークに適したフラックス洗浄剤をぜひお探しください。

フラックス洗浄剤を探す

フラックス洗浄剤の商品一例


プリント基板向け
VIGON® A 301

主要な洗浄方式すべてに対応可能な水系洗浄剤

製品詳細へ


パワーエレクトロニクス向け
VIGON® PE 305N

難溶性物質含有のフラックス残渣も洗浄可能な水系洗浄剤

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手拭き用基板洗浄
VIGON® EFM

VIGON EFMによるマニュアル基板洗浄

高い洗浄性・乾燥性で作業時間短縮につながる洗浄剤

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  • 洗浄剤の種類と選定方法(水系洗浄剤・溶剤系洗浄剤)
  • 洗浄方式の種類と選定方法(スプレー・超音波・噴流)
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洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。

弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

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