洗浄・リンス条件が絶縁信頼性に与える影響
~水溶性フラックスとロジン系フラックスの比較評価~

【共同研究'26】弘輝 様 x ゼストロンジャパン

本共同研究は、弘輝様との2025年の研究結果を踏まえ、継続的な検証の一環として実施しました。
本研究では「ロジン系フラックスでは同様の傾向が見られるのか」という点に着目し、洗浄・リンス条件の違いが絶縁信頼性や表面状態に与える影響を評価しました。
さらに、水溶性フラックスとの比較を通じて、フラックス種類による洗浄後の特性の違いも検証しています。

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2025年に発表した弘輝様との共同研究では、一般に「純水で容易に洗浄できる」と認識されることが多い水溶性フラックスについて、洗浄後のイオン残渣の「量」だけでなく、形態変化や抵抗値なども含め総括的な影響を調査しました。

検証の結果、

  • イオン残渣はわずかな量であっても抵抗値へ影響を及ぼす
  • 高密度実装においては、イオン残渣による影響を受けやすいため、水溶性フラックスにおいても洗浄剤を用いた洗浄プロセスが推奨される。(特に低スタンドオフ洗浄)

ということが分かりました。

この共同研究について、より詳しくご覧になりたい方は下記ページよりご確認ください。
【共同研究‘25】水溶性フラックスの洗浄課題 ~絶縁性能と残渣分析~


今回の共同研究では、弘輝様のテスト基板とはんだペースト(ロジン系フラックス)を用い、洗浄条件およびリンス条件の違いが、基板の絶縁信頼性や表面状態に与える影響を評価しました。
さらに、前回の共同研究における水溶性フラックスの洗浄評価データと比較することで、水溶性フラックスとロジン系フラックスの違いについても検証しました。

▼評価条件
はんだペースト:S3X58-M500(弘輝様)

条件 洗浄剤 系統 洗浄方式 洗浄 リンス
1 VIGON® PE 305N 水系 スプレー 洗浄1分 充分
2 洗浄12分 不充分
3 ZESTRON® FA+ 溶剤系 超音波 洗浄3分 充分
4 洗浄12分 不充分

 

▼ECMテスト(Electrochemical Migration Resistance Test)条件

ガラス板を載せて接着剤で固定し、疑似的な低スタンドオフ(50~60μm)を作成したテスト基板
弘輝様 テスト基板
条件 ライン幅 / ライン間距離 カバーガラス
A 0.5 /0.15 mm
B 0.5 /0.15 mm
C 0.15 /0.15 mm
D 0.15 /0.15 mm

 

IPC-TM-650 test methods manual 2.6.14.1 準拠

65℃ 88% 596時間

4条件の2つ(A, D)はガラス板を載せて接着剤で固定し、疑似的な低スタンドオフ(50~60μm)を作成

リンス不足の方が洗浄不足よりも抵抗値は下がる傾向

結果① リンス不足の方が洗浄不足よりも抵抗値は下がる傾向

ECM試験の結果、リンス不足条件では洗浄不足条件以上に絶縁抵抗値の低下が顕著であることが確認されました。
理由として、ロジン自体は高い絶縁性を有している点が挙げられます。そのため、洗浄時間が短くロジン成分が多く残存しているフラックス残渣であっても、比較的高い抵抗値を維持できたと考えられます。
しかし洗浄時間が長かった場合、ロジン成分の大半は除去されてしまい、主体成分は活性剤(ハロゲン・有機酸)が主体となり、リンス不足の状態ではイオン系の残渣(活性剤成分)は十分に除去されず、基板細部に残留すること抵抗値の減少に繋がったと示唆されます。

 

溶剤系洗浄剤の洗浄について、リンス不足条件でデンドライトが成長

SEM-EDSによる分析の結果、溶剤系洗浄剤で洗浄し意図的にリンス不足とした基板では、除去しきれなかったイオン残渣と推察される残存が確認されました。
これらの残渣には、イオン由来と考えられる成分が含まれており、デンドライト成長を促進した可能性があります。
水系洗浄剤と比較すると、溶剤系洗浄剤はイオンを溶解しにくいため、リンス後にもイオン成分が残留しやすい傾向にあり、洗浄剤中における適切なイオン量の管理が必要となります。

 

結果③ 水溶性フラックスはロジン系フラックスより抵抗値への影響大

▼水溶性フラックスの洗浄評価(2025年共同研究)

水溶性フラックスにおいてリンス不足の場合、ECMテストの結果、立ち上がりが低く、時間経過後も回復しきらない

■評価条件
はんだペースト:S3X58-HF950W(弘輝様)
洗浄剤:HYDRON® SE 220 20%濃度
洗浄方式:超音波 洗浄温度:60℃

■ECMテスト条件
弘輝様 テスト基板
IPC-TM-650 test methods manual 2.6.14.1 準拠
65℃ 88.5% 500時間
ライン間距離:0.318mm  ライン幅:0.318 mm

立ち上がりが低く、時間経過後も回復しきらない

 

2025年の共同研究で評価した水溶性フラックスに対し、本研究ではロジン系フラックスを用いて洗浄後の絶縁抵抗値と外観変化を評価しました。
イオン成分は基板表面に沈着しており、抵抗値の低下を引き起こしていると推察されます。

フラックス種による洗浄後の特性の違いは以下のようにまとめられます。

  • イオン残渣を評価する際、フラックス種を問わず目視が困難となるケースがあるため、確実に精査するためにはマイクロスコープ画像だけでなく、SEM-EDSでの観察が推奨される。
  • 水溶性フラックスではロジンのような抵抗値が高い物質の保護下になく、活性剤量が多いため、基板表面にイオン性残渣が残存するリスクが高い。絶縁抵抗値に与える影響が大きい。
  • 溶剤系洗浄剤はロジン系物質の除去性に優れるものの、リンス不足となった場合、イオン残渣の影響を受けやすく抵抗値の低下や表面状態の不安定化を引き起こす可能性が高い。

 


3. まとめ

本共同研究では、洗浄条件およびリンス条件の違いが、基板の絶縁信頼性や表面状態に大きく影響することが明らかになりました。

洗浄後に基板表面へ残存・再付着したイオン残渣は、微量であってもリーク電流の発生やデンドライト成長として顕在化する可能性があり、最終的に製品の長期信頼性にも影響を及ぼす要因となり得ます。
より過酷で複雑な環境下での長期間使用が想定される製品や、高密度実装品・高信頼性が求められる電子デバイスにおいては、洗浄工程だけでなく、リンス工程を含めたプロセス全体の最適化をおすすめします。

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コーティング下でデンドライト発生

4. 洗浄・リンス工程を含めた洗浄プロセス最適化サポート

ゼストロンでは、洗浄工程・リンス工程を含めたプロセス全体の最適化をサポートしています。
テクニカルセンターには、インライン・バッチ式のスプレーや噴流、超音波装置など、多様な洗浄設備を備えており、お客様の基板仕様や実装条件に合わせて最適な洗浄剤・洗浄方式を、弊社エンジニアが検証・提案いたします。

また、洗浄テストと並行して分析センターにて清浄度を化学的観点から分析し、洗浄後の残渣状態やリスク要因を多角的に確認します。
テスト終了後には、評価結果に基づいた推奨洗浄・リンス工程や条件を詳細にまとめたテクニカルレポートを提出し、実際の量産工程への展開までサポートします。

洗浄やリンス工程に課題をお持ちの方、また高密度実装品や高信頼性が求められる製品の洗浄プロセス最適化をご検討の際は、ぜひ洗浄テストをご活用ください。 

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【共同研究:株式会社弘輝 様】

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