SEM-EDS(SEM-EDX)分析とは?原理から元素分析・異物解析・残渣解析の事例まで
電子機器の製造現場では、異物や残渣による品質トラブルが発生することがあります。SEM-EDS分析は、その原因究明に役立つ分析手法として広く活用されています。この記事では、SEM-EDSの基本的な原理や分析からわかること、そして具体的な解析事例をご紹介します。
目次
1. SEM-EDS(SEM-EDX)分析とは?SEMとEDSを組み合わせた分析手法
1.1 SEM-EDS(SEM-EDX)でできること:形態観察と元素分析
1.2 SEMの種類
1.3 SEM-EDS(SEM-EDX)の主な特徴とメリット
1.4 SEM-EDS(SEM-EDX)の適用分野
2. SEM-EDSの原理
2.1 SEM(走査電子顕微鏡)の原理:二次電子と反射電子で形状を観察
2.2 EDS(エネルギー分散型X線分光法)の原理:特性X線で元素を特定
3. SEM-EDS分析でわかること
3.1 表面の微細な形状(形態観察)
3.2 含まれる元素の種類(定性分析)
3.3 元素の含有比率(定量分析)
3.4 元素の分布状態(マッピング分析)
4. SEM-EDSによる異物・残渣解析の事例
4.1 【異物・残渣の元素分析事例】金属塩残渣の分析
4.2 【洗浄前後の残渣評価事例】シンター剤残渣・仮留め剤の洗浄評価
4.3 【光学顕微鏡では見えない残渣の評価事例】水溶性フラックス残渣の評価
5. SEM-EDS分析の注意点と他分析手法との使い分け
5.1 他分析手法との使い分け
5.2 測定条件によって分析結果は変わる
6. よくあるご質問
7. ゼストロンによるSEM-EDS分析サービス
8. 技術コラム・資料
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SEM-EDS(SEM-EDX)分析は、走査電子顕微鏡(SEM)による形態観察と、エネルギー分散型X線分光法(EDS/EDX)による元素分析を組み合わせた分析手法です。
電子機器の製造現場では、異物や残渣の分析、不良原因の調査などに活用されています。
SEM-EDS分析では、試料の形状を観察する「形態観察」と、試料を構成する元素を調べる「元素分析」を同じ箇所で実施できます。
まず、SEMを用いて試料表面を高倍率で観察することで、微細な異物や残渣、表面状態を詳細に確認できます。
さらに、SEMで観察している箇所に対してEDSを用いて「どのような元素が含まれているのか」を把握でき、データ処理を施して分布域を視覚化することも可能です。
このように、SEM-EDS分析では「どのような形状のものが、何の元素で構成されているのか」を一度の分析で把握できるため、異物や欠陥の原因究明に役立ちます。
1.2 SEMの種類
SEMには、電子源や観察性能の違いによっていくつかの種類があります。
| 種類 | 特徴 | 分解能(目安) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| タングステン | 最も一般的で導入コストが比較的低い | 約3~10 nm | 一般観察・教育 |
| LaB6 | タングステンSEMより高輝度・高分解能 | 約2~5 nm | 研究・品質管理 |
| ショットキーFEG | 高輝度で安定性が高く、低加速電圧観察に優れる | 約1 nm | 半導体・電子部品・材料解析 |
| Cold FEG | 最高クラスの分解能を持つが、装置や運用コストが高い | 約0.4~0.8 nm | ナノ材料、最先端研究 |
ゼストロンでは、FE-SEMを保有しており、微細な異物や残渣の観察・元素分析を行うことが可能です。
1.3 SEM-EDS(SEM-EDX)の主な特徴とメリット
-
高倍率・高分解能による観察が可能
SEMは光学顕微鏡よりも高倍率かつ高分解能で観察できるため、微細な異物や残渣、表面状態を詳細に評価できます。 -
微小領域をピンポイントで分析可能
μm(マイクロメートル)オーダーの微小な領域をピンポイントで分析することが可能です。 -
異物や残渣の発生源特定に有効
検出された元素情報から、フラックス残渣、金属粉、めっき由来成分などの発生源を推定できます。また、元素マッピングにより元素の分布状況を可視化できるため、汚染箇所や元素の偏在状況の把握にも有効です。 -
迅速な分析が可能
観察から元素分析までを同一装置で実施でき、異物解析や不良解析を効率的に進めることが可能です。
※関連ページ
フラックス残渣とは?フラックス残渣の種類と分析方法
1.4 SEM-EDS(SEM-EDX)の適用分野
SEM-EDS分析は、その多機能性から多岐にわたる産業分野で活用されています。電子部品や半導体分野でも広く活用されていますが、他の分野でも重要な役割を担っています。
| 分野 | 活用例 |
|---|---|
| 電子・半導体 |
|
| 金属・材料 |
|
| 化学・高分子 |
|
| その他 |
|
このように、SEM-EDSは様々な分野で活用されており、異物や残渣の分析、不良原因の特定、品質改善に役立つ分析手法として利用されています。
2. SEM-EDSの原理
SEM-EDS分析では、非常に細く絞った電子線を試料に照射します。電子線と試料の相互作用によって発生する信号を利用することで、試料の表面形状の観察や元素分析が可能になります。ここでは、SEMとEDSそれぞれの原理について詳しく解説します。
2.1 SEM(走査電子顕微鏡)の原理:二次電子と反射電子で形状を観察
走査電子顕微鏡(SEM)は、試料表面の微細な凹凸や形状を高倍率・高分解能で観察できる装置です。電子線を試料表面に走査し、その際に発生する信号を検出することで、試料の表面形状を観察します。
| 信号 | 発生原理 | わかること |
|---|---|---|
| 二次電子 | 電子線が試料表面の原子と衝突した際に放出される低エネルギーの電子 | 表面の凹凸や微細な形状 |
| 反射電子 | 入射した電子線が試料内部で散乱され、比較的高いエネルギーを保ったまま反射された電子 | 元素組成の違い |
2.2 EDS(エネルギー分散型X線分光法)の原理:特性X線で元素を特定
EDS(エネルギー分散型X線分光法)は、SEMで観察している微小な領域にどのような元素が含まれているかを分析する手法です。
EDSでは、SEMから照射された電子線が試料中の原子に衝突することで、「特性X線」と呼ばれるX線が発生します。この特性X線は元素ごとに固有のエネルギーを持っているため、そのエネルギーを測定することで元素の種類を特定できます。
また、特性X線の強度(量)を測定することで、各元素がどの程度含まれているかを推定することも可能です。
▼元素分析の原理
3. SEM-EDS分析でわかること
SEM-EDS分析では、異物や残渣の有無だけでなく、その形状、元素組成、分布状態などの情報を取得できます。SEM-EDS分析によってどのような情報が得られるのかを解説します。
3.1 表面の微細な形状(形態観察)
SEM(走査電子顕微鏡)による形態観察では、試料表面の微細な形状を詳細に捉えることができます。光学顕微鏡では観察が難しい微細な異物や残渣も、SEMでは高倍率・高分解能で観察できます。これにより、肉眼や光学顕微鏡では識別できないような微細な異物の形状、粒子、クラック、結晶構造などを、立体的にかつ鮮明に観察できます。
製造プロセスにおける適切な管理は、多くの不具合を未然に防ぐための基本です。特にリフロー工程とはんだペーストの管理は、基板の品質に直結します。
3.2 含まれる元素の種類(定性分析)
SEMで観察している微小な領域に対して、EDS(エネルギー分散型X線分光法)を用いることで、その部分にどのような元素が含まれているかを特定する「定性分析」が可能です。
EDS分析では、横軸にX線のエネルギー、縦軸にX線の強度をとった「EDSスペクトル」が得られます。スペクトル上には含有元素に対応したピークが現れ、その位置や強度を解析することで、分析対象に含まれる元素を特定できます。
3.3 元素の含有比率(定量分析)
定性分析で特定された各元素が、どのくらいの割合で含まれているのかを明らかにするのが「定量分析」です。
EDSスペクトルにおける各元素のピークの高さや面積(X線強度)は、その元素の濃度と相関関係があります。この関係性に基づいて、試料中に含まれる各元素の重量パーセント(wt%)や原子パーセント(at%)を算出できます。
| Point | C | O | Al | Cl | Ni | Pd | Sn | Au | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2.44 | 0.37 | 4.56 | 3.45 | 1.37 | 87.81 | 100.00 | ||
| 2 | 2.46 | 0.38 | 4.30 | 3.60 | 1.37 | 87.89 | 100.00 | ||
| 3 | 9.38 | 1.61 | 0.53 | 1.93 | 4.73 | 1.95 | 79.87 | 100.00 |
Mass%
3.4 元素の分布状態(マッピング分析)
マッピング分析は、試料表面における各元素の分布状態を視覚的に捉えることができる手法です。特定の領域を電子線でスキャンしながら、それぞれの点から放出される特性X線の強度を測定します。そして、特定の元素からのX線が強く検出された箇所を色分けすることで、元素の分布状態を二次元的に可視化できます。
4. SEM-EDSによる異物・残渣解析の事例
SEM-EDS分析はさまざまな分野で活用されていますが、電子機器の製造現場では異物や残渣の発生原因調査、洗浄後の残渣評価、清浄度の確認などに広く利用されています。ここでは、電子実装分野におけるSEM-EDSの活用事例をご紹介します。
4.1【異物・残渣の元素分析事例】金属塩残渣の分析
基板上に発生した残渣について、SEM-EDSを用いて詳細な分析を実施しました。
その結果、残渣中には塩形成に関与する成分や外部からのコンタミネーションの混入が示唆され、目視や外観観察だけでは判断できない情報を得ることができました。
SEM-EDS反射電子像
入射電圧:10kV
倍率:x1,000
モード:低真空
より詳細をご覧になりたい方は、下記ページをご覧ください。
金属塩とは?絶縁抵抗不良を引き起こしうる『金属塩』の洗浄について発生メカニズムや確認・分析方法を解説
4.2 【洗浄前後の残渣評価事例】シンター剤残渣・仮留め剤の洗浄評価
シンター剤残渣と仮留め剤が付着したサンプルに対して、洗浄前後でSEM-EDS分析を実施しました。
元素マッピングおよび定量分析を行った結果、洗浄後は炭素(C)や酸素(O)由来の残渣が低減し、基材由来の銅(Cu)の検出割合が増加しました。このようにSEM-EDSは、洗浄後の残渣除去効果を可視化し、洗浄プロセスの妥当性を評価する手法として活用できます。
| BED | C-K | O-K | Cu-L | |
|---|---|---|---|---|
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洗浄前 |
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洗浄後 |
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本事例は、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社様との共同研究として実施したものです。
共同研究の詳細をご覧になりたい方は、下記ページをご覧ください。
[シンター剤残渣+仮留め剤]の除去~複合有機物の除去効果~
4.3 【光学顕微鏡では見えない残渣の評価事例】水溶性フラックス残渣の評価
光学顕微鏡による観察では残渣の有無を判断できない場合があります。本事例では、水溶性フラックスを使用した基板に対してSEM-EDS分析を実施し、基板由来ではない炭素(C)元素を可視化することで、活性剤として使用されている活性剤として使用されている有機酸の残留を確認しました。SEM-EDSは、光学顕微鏡では確認が難しい微小な残渣や汚染物質の評価にも有効です。
本事例は、株式会社弘輝様との共同研究として実施したものです。共同研究の詳細をご覧になりたい方は、下記ページをご覧ください。
水溶性フラックスの洗浄課題~絶縁性能と残渣分析~
5. SEM-EDS分析の注意点と他分析手法との使い分け
SEM-EDS分析は、異物や残渣の原因究明に有効な分析手法ですが、分析対象や目的によっては他の分析手法との使い分けや、適切な測定条件の設定が重要になります。
5.1 他分析手法との使い分け
SEM-EDS分析では取得できる情報に限りがあるため、分析対象や目的に応じて他の分析・評価手法を使い分けることが重要です。
| 分析・評価手法 | 主な用途 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| SEM-EDS | 微小異物・残渣の元素分析 | 元素の種類や分布を把握できるが、有機物の種類やイオン種の特定 |
| FT-IR | 有機物・残渣の成分分析 | フラックス残渣や樹脂など、有機化合物の同定に有効 |
| イオンクロマトグラフィー(IC) | イオン性汚染物質の定量分析 | 塩化物・硫酸塩・有機酸などのイオン種を定量評価できる |
| ROSE Test | 基板全体のイオン性汚染評価 | 基板全体のイオン汚染レベルを迅速に評価できるスクリーニング手法 |
| 光学顕微鏡 (マイクロスコープ) |
異物・残渣の外観観察 | 異物の形状や分布を迅速に確認し、詳細分析の前評価として有効 |
SEM-EDSとFT-IRやイオンクロマトグラフィー(IC)、ROSE Testなどを組み合わせることで、異物や残渣の発生原因をより多角的に評価し、原因究明や対策立案につなげることができます。
ゼストロンでは、SEM-EDSをはじめ、FT-IR、イオンクロマトグラフィー、ROSE Testなど複数の分析・評価手法に対応しており、それらを組み合わせながら、分析目的に応じた最適な評価手法をご提案しています。
5.2 測定条件によって分析結果は変わる
SEM-EDS分析では、装置の性能だけでなく、測定条件の設定も分析結果に大きく影響します。例えば、加速電圧や観察倍率、分析領域などの設定によって、観察できる範囲や取得できる情報は変化します。そのため、分析目的に応じて測定条件を適切に設定し、必要に応じて条件を変更しながら評価を行うことが重要です。
SEM-EDSは、装置を操作するだけで常に同じ結果が得られる分析装置ではありません。分析対象や目的に応じた測定条件の設定と、得られた結果を適切に解釈するためには、測定を行う担当者の知識や経験も重要になります。
ゼストロンでは、豊富な分析実績をもとに、分析対象や目的に応じて最適な測定条件を設定し、異物や残渣の原因究明をサポートしています。異物解析や残渣分析、洗浄プロセスの評価でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
6. よくあるご質問
- SEM-EDSとSEM-EDXの違いは?
SEM-EDSとSEM-EDXは基本的に同じ分析手法を指します。EDSは「Energy Dispersive Spectroscopy」、EDXは「Energy Dispersive X-ray Analysis」の略称であり、メーカーや地域によって呼び方が異なります。
- SEM-EDS分析にかかる費用や納期は?
SEM-EDS分析にかかる費用や納期は、分析内容や依頼する会社によって大きく変動するため、各分析会社へ相談することをおすすめします。
ゼストロンでは、費用や納期について以下のとおりご案内しています。
費用:分析内容やサンプル数に応じて個別にお見積りしています。詳細はお問い合わせください。
納期:分析サービスをお申し込みいただいてから、通常2~3週間程度を目安に結果をご報告しています。ただし、評価サンプル数や分析内容、混雑状況によって変動する場合があります。詳細な費用や納期については、お気軽にお問い合わせお問い合わせください。
ゼストロンでは、SEM-EDSを用いた異物・残渣分析を通じて、お客様の不良解析や洗浄プロセスの評価を実施しております。
また、電子基板や実装部品の洗浄分野で長年培ってきた知見を活かし、必要に応じて複数の分析・評価手法を組み合わせながら、分析結果のご報告だけでなく、残渣や汚染の原因調査から、洗浄プロセスの構築・評価・改善までサポートしています。
- 異物や残渣の発生原因が分からない
- 不良原因の調査を進めたい
- 洗浄後の清浄度を評価したい
このようなお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
詳細については、分析サービスページをご覧ください。
洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。
