リーク電流とは?電子デバイスの不良をなくすために原因・対策を知る

電子回路において、設計者の意図しない経路を流れる電流、それがリーク電流です。
この見えない電流は、製品の信頼性、性能、そして寿命に大きな影響を与える可能性があり、電子デバイス開発における重要な課題です。
半導体の微細化・高密度化が加速する現代において、デバイス内部の物理的な限界から生じるもの、あるいは製造工程におけるわずかな問題に起因するものまで、その発生源は多岐にわたります。

本記事では、リーク電流の基礎知識から発生原因、電子基板・実装レベルでの具体的なリスク、設計・製造プロセスにおける対策、さらに洗浄・清浄度評価による対策方法について解説します。

おすすめ資料「静かなる進化」はなぜ生じたのか
ー絶縁性と樹脂接合強度の相関ー

下記に当てはまる方は、ぜひ資料をダウンロードください。

  • 樹脂封止後の剥離・絶縁不良の原因を知りたい
  • 高信頼性デバイス向けに、洗浄と表面処理をどう最適化すべきか知りたい
  • サイレントキルを防ぐための表面設計の考え方を学びたい
    無料ダウンロード
実装技術2025年12月の寄稿記事「静かなる退化はなぜ生じたのか」の技術資料

リーク電流は半導体デバイスにおいて様々な問題を引き起こします。
主な影響として、待機状態でも電流が流れることによる消費電力の増大、微小電流を扱う回路でのノイズによる性能劣化や誤作動、さらに電力損失が熱となってデバイス温度を上昇させることで故障や寿命低下を引き起こす可能性があります。
特にモバイル機器、IoT機器、バイオセンサ、パワー半導体などではその影響が顕著です。

電子回路において設計者の意図しない経路を流れる電流

▼リーク電流が引き起こす主な問題

問題 内容 具体的影響・例
消費電力の増大 デバイスがオフや待機状態でもリーク電流が流れ、不要な電力消費が発生する バッテリー駆動のモバイル機器やIoT機器の電池寿命低下
性能劣化・誤作動 微小信号を扱う回路ではリーク電流がノイズとなり動作に影響 化学・バイオセンサでのfAレベル電流測定において測定誤差が発生
発熱・故障・寿命低下 リーク電流による電力損失が熱となりデバイス温度を上昇させる パワー半導体や高密度ICで局所発熱→熱暴走・故障リスク

 


2. リーク電流が発生する主な原因とは?

リーク電流は、本来意図しない経路を流れる微小な電流であり、その発生原因は多岐にわたります。
半導体デバイス内部の物理現象に起因するものから、電子基板の設計・製造・実装プロセスに起因するものまで、さまざまな要因によって発生します。
リーク電流の主な発生原因を「半導体デバイス内部」と「電子基板・実装レベル」の2つのカテゴリに分けて解説します。

半導体デバイスの微細化は高性能化・低消費電力化を実現した一方で、リーク電流の増加という新たな課題を生み出しています。
特にトランジスタのゲート絶縁膜の薄膜化やチャネル長の短縮によって、従来は問題にならなかった物理現象が顕在化しています。
半導体デバイス内部の主なリーク経路として、

  1. MOSFETのオフ状態でも流れるサブスレッショルドリーク電流
  2. ゲート絶縁膜をトンネル効果で通過するゲートリーク電流
  3. PN接合の逆バイアス状態で発生する接合リーク電流

の3種類に分類されます。

半導体デバイス内部において、サブスレッショルドリーク電流・ゲートリーク電流・接合リーク電流の3種類がある

リーク電流の模式図

  リーク経路 発生場所・仕組み 主な原因 特徴
1 サブスレッショルドリーク電流 MOSFETのドレイン–ソース間 ゲート電圧がしきい値以下でも微弱な反転層が形成される オフ状態でも微小電流が流れる
2 ゲートリーク電流 ゲート絶縁膜を通過 絶縁膜の極薄化による量子トンネル効果 電子が絶縁膜をすり抜けて流れる
3 接合リーク電流 PN接合部(ソース/ドレインと基板など) 空乏層で熱生成されたキャリアが電界で移動 逆バイアス状態でも漏れ電流が発生

 

2.2【電子基板・実装レベル】設計や製造プロセスに潜む原因

半導体チップ単体ではリーク電流が問題なく管理されていても、電子基板への実装やその後の製造工程において、予期せぬリーク電流が発生するケースは少なくありません。
これは、チップと基板を接続する際や、はんだ付け、洗浄、コーティングなどのプロセスで、目には見えないコンタミネーション(フラックス残渣など)や設計上の問題が原因となるためです。
電子基板・実装レベルでのリーク経路について、次の3つの原因とそのメカニズムについて解説していきます。

  • 基板設計(レイアウト)の問題
  • フラックス残渣や基板表面の汚染
  • 部品の劣化や絶縁不良

導体パターン間の距離不足などのレイアウト設計の問題はリーク経路を形成しやすく、特に高湿度環境では絶縁性能が低下して問題が顕在化します。
また、はんだ付け工程で残るフラックス残渣は湿気を吸収して電解質となり、イオンマイグレーションを引き起こすことでリーク電流を増大させます。
さらに、電子部品の経年劣化や絶縁材料の劣化、パッケージのクラックなども絶縁不良を招き、リーク電流の原因となりえます。

マイグレーションを起こしショートした端子間
イオンマイグレーション
  主な原因 発生メカニズム 影響・特徴
基板設計(レイアウト)の問題 導体パターン間の距離不足(クリアランス不足) 基板表面や内部絶縁体を通じて電流が漏れる 高湿度環境で吸湿により絶縁性低下、リーク発生リスク増大
フラックス残渣・基板表面の汚染 フラックスに含まれるイオン性物質 湿気を吸収して電解質化し、電気化学セルを形成 イオンマイグレーションにより導電フィラメントが形成されリーク電流増加
部品の劣化・絶縁不良 部品の経年劣化、初期不良、材料劣化 絶縁抵抗低下や水分侵入により絶縁性能が低下 コンデンサやコネクタの絶縁低下、半導体パッケージのクラックによる不良

 


3. 電子デバイスの不良を防ぐためのリーク電流対策

電子デバイスにおけるリーク電流は発生要因が多岐にわたるため、一つの解決策ですべてをカバーすることは困難です。
そのため、設計から製造、実装後の保護に至るまでの各段階で、それぞれの原因に応じた適切な対策を講じる必要があります。
リーク電流を抑制し、製品の信頼性とコストを両立するためには、設計段階・製造プロセス・保護処理の3つの観点から対策を検討することが重要です。

  • 設計段階:低リーク特性の部品選定と基板レイアウト最適化によりリークの発生源を減らす。
  • 製造プロセス:はんだ付け条件の適切な管理とフラックス残渣の洗浄・清浄度評価によって基板表面の汚染を防ぐ。
  • 保護処理:防湿コーティングを施すことで湿気や汚染から基板を保護できるが、コーティング前の十分な洗浄が不可欠。
対策 主な原因 目的・ポイント
設計段階 低リーク特性を持つ部品の選定 データシートでリーク電流や絶縁抵抗を確認し、リークの少ない部品を選ぶ
基板パターン・レイアウト最適化 導体間のクリアランス確保、スリット加工で沿面距離を延ばしリーク経路を抑制
製造プロセス はんだ付けプロセス管理 適切な温度プロファイルを維持し、フラックスの過度な熱分解や残渣生成を防止
フラックス洗浄と清浄度評価 洗浄剤と洗浄方法を適切に選び、洗浄後の清浄度を評価してリーク発生を低減
保護処理 防湿コーティング 湿気や汚染物質から基板を保護しリーク電流を防ぐ
コーティング前の洗浄 残渣を封じ込めないよう事前に十分な洗浄が必要

 


リーク電流の評価・測定には、微小電流を直接測定する方法と、基板レベルの信頼性を評価する方法があります。
微小電流の測定には、ピコアンメータやソースメータユニット(SMU)を使用し、対象に電圧を印加して流れる電流を測定します。
一方、基板レベルでは表面絶縁抵抗(SIR)試験を行い、高温多湿環境下で電極間の絶縁抵抗の経時変化を測定することで、基板表面の清浄度や材料による信頼性リスク(イオンマイグレーションなど)を評価します。

  ピコアンメータ / SMU SIR試験(表面絶縁抵抗試験)
測定対象 デバイスや回路の端子間に流れる微小電流 表面の絶縁状態(基板・実装レベル)
測定方法 対象端子間に規定電圧を印加し、流れる微小電流を直接測定 櫛形電極パターンのテストクーポン(テスト基板)に電圧を印加し、リーク電流から絶縁抵抗を算出
測定原理 オームの法則に基づき、電圧印加時の電流値を直接測定 電極間のリーク電流から絶縁抵抗を計算
評価レベル 部品・回路レベルの評価 基板・実装および製造プロセス全体の評価
試験環境 基本的に室温など通常環境で測定 高温多湿など実使用環境を模擬した条件
評価できる内容 デバイスのリーク電流特性 基板表面の清浄度、材料由来の信頼性問題(イオンマイグレーションなど)
主な目的 微小リーク電流の定量測定 製造プロセスや材料の長期信頼性評価

 

▼SIR試験 装置例(ZESTRON America保有)

表面絶縁抵抗試験が可能なSIR装置

▼SIRで使用する専用テスト基板

SIR試験にて使用するテストクーポン

5. フラックス洗浄と清浄度評価

SIR試験によって絶縁抵抗の変化は把握できますが、リーク電流の原因が基板表面の残渣や汚染に起因するのかまでは特定できない場合があります。
そのため、不良要因を明確にするには、化学的原理にもとづいた清浄度評価や残留物質分析などが有効となります。
電子基板・実装レベルでは、フラックス残渣だけではなく、基材・環境由来のイオン性物質がリーク経路を形成するケースも見受けられるため、工程の最適化が重要となります。その1つの手法として洗浄による残留物の除去があげられます。
特に近年は、フラックス残渣が単一成分ではなく複合的な残渣として存在することが多く、従来の洗浄手法では不十分となるケースが増えています。
化学的分析により残渣の特性を把握し、それに適した洗浄および分析手法に最適化することが求められます。

フラックス残渣には大きく分けて次の3つが含まれています。

  • 複合有機物
  • イオン
  • 難溶性金属塩

そのため、フラックス洗浄は実質的に複合物質残渣洗浄へと変化しています。
溶剤系洗浄剤は、ロジンなどの有機成分に対しての有効性は非常に高いですが、イオン性物質や難溶性金属塩をほとんど溶かすことはできないため、「溶解」させる手法での除去は困難です。
さらにイオン性物質に焦点を当てると、イオンがデバイス表面・電極間・低スタンドオフに残留することで、リーク電流が発生し、マイグレーション腐食などの危険性を高め、その結果様々な不良を引き起こす可能性があります。

5.2 残渣の種類に合わせた分析方法

フラックス残渣は5.1 洗浄対象となるフラックス残渣の成分で紹介したとおり、複数の物質が存在するため、単一の評価手法だけでは十分に把握できない場合があります。
複合有機物は有色かつ厚みのある状態であれば外観観察可能ですが、イオンと難溶性金属塩は外観観察のみで判断するのは難しいです。
そのため、残渣の種類に応じて、複数の分析手法を組み合わせて評価することが重要です。

フラックス残渣の種類 イオン 有機物 金属塩
分析手法・装置 イオンクロマトグラフィー (IC)

FT-IR

SEM-EDS

残渣に応じて分析手法を選択することで、どの残渣がリーク経路を形成しているのかを特定でき、工程改善につなげやすくなります。

フラックス洗浄において、ロジンなどの有機成分は溶解しやすい一方で、難溶性物質や電極間に残留したイオンは従来の溶解中心の洗浄では除去が困難となる場合があります。
ゼストロンのMPC®洗浄剤(水系洗浄剤)は、剥離と溶解を組み合わせたダブル方式により、複合化した残渣へ多角的にアプローチできる点が特長です。

難溶性物質に対しては剥離洗浄を行い、イオンなどの水溶性成分については主成分である水による溶解洗浄で除去を促進します。
このように、MPC®洗浄剤の特性が各成分に対して適切に作用することで、複合物質として存在するコンタミネーションにも対応が可能となります。
MPC®洗浄剤についてより詳しく知りたい方は下記をご覧いただくかお問い合わせください。
MPC®洗浄剤とは?

お問い合わせ


6. 【事例】水溶性フラックス残渣が絶縁抵抗に与える影響

電子デバイスの高密度実装が進むにつれ、ICやチップ部品の電極間距離はますます狭くなっています。
そのため、基板表面に残る微量なイオン残渣でも絶縁抵抗の低下や絶縁不良を引き起こし、リーク電流の原因となる可能性があります。
本事例では、株式会社弘輝との共同研究として、水溶性フラックスを使用した基板を対象に、洗浄条件の違いが残渣量や絶縁抵抗に与える影響を評価しました。
特に、イオン残渣の「量」だけでなく、残渣の形態変化や抵抗値の変化も含めて総合的に検証しています。

▼評価方法

  • はんだペースト:S3X58-HF950W
    (株式会社弘輝 様)
  • 洗浄剤:HYDRON® SE 220  20%濃度
  • 洗浄方式:超音波
  • 洗浄温度:60℃
条件 洗浄時間 1stリンス 2ndリンス
未洗浄 - - -
ワースト 0.5分 洗浄剤3wt%添加水 常温 0.5分 なし
不十分 2分 洗浄剤3wt%添加水 常温 2分 なし
ベスト 10分 純水 常温2分 純水 40℃ 2分

 

<ECMテスト条件>
IPC-TM-650 test methods manual 2. 6. 14. 1 準拠
65℃ 88.5% 500時間

<分析(SEM-EDS)条件>
型式:JSN-IT710HR/LA
入射電圧:5.0~10.0kV
WD:10mm

走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法とは、加速された電子線を照射し試料表面の拡大観察を行うSEMと、その電子線照射によって発生する特性X線を検出し元素分析を行うEDSを組み合わせた装置です。

▼検証結果

評価の結果、洗浄およびリンス条件が不十分な場合、絶縁抵抗が大きく低下することが確認されました。
絶縁抵抗の低下は導体間に電流が流れやすい状態を示しており、リーク電流が発生しやすい環境が形成されていることを示唆します。
一方、適切な洗浄・リンス条件では絶縁抵抗が高く維持され、リーク電流のリスクが低減される結果となりました。

水溶性フラックスの洗浄において洗浄とリンス条件が改善するほど抵抗値も上昇する

SEM-EDSによる元素分析では、基板由来ではないC元素(有機物残渣由来)が確認されました。
マイクロスコープでは確認できない微量の残渣であっても、絶縁抵抗の低下を引き起こし、リーク電流の発生リスクにつながる可能性があることが示されました。

  • 「リーク電流」と「漏れ電流」の違いは?

    本記事で解説してきた「リーク電流(leakage current)」とは、半導体デバイスや電子回路内部の絶縁されているべき部分で、意図しない経路を流れる微小な電流を指します。
    一方、「漏れ電流(earth leakage current)」という言葉は、主に商用電源を使用する電気機器の安全規格(例えばIEC 60950など)の文脈で用いられます。これは、機器の筐体やアース線を通じて大地に漏れ出す電流を指します。

  • 無洗浄はんだでもリーク対策のために洗浄は必要?

    無洗浄はんだは洗浄工程の省略を目的に設計されていますが、微細化・高密度実装が進む現在では、少量のイオン性物質や残渣が電極間に残留することで、リーク電流が発生する可能性があります。
    そのため、高信頼性が求められる製品・分野では、無洗浄はんだを使用していても洗浄および清浄度評価を実施することが有効です。
    無洗浄はんだの洗浄についてより詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

    無洗浄はんだを使用しているのに、なぜ洗浄する必要性があるのか

  • リーク電流とイオンマイグレーションの関係は?

    イオンマイグレーションは、基板上に残留したイオン性物質が湿気や電界の影響を受けて移動し、導電性のフィラメントを形成する現象です。このフィラメントが電極間の新たな導電経路となることで、リーク電流の発生・増大につながります。
    イオンマイグレーションについてより詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

    イオンマイグレーションの原因と対策 基板の見えない不良を防ぐ

リーク電流対策において、電子基板・実装レベルでは、洗浄条件の最適化と残渣の可視化(分析)を組み合わせたアプローチが重要となります。
ゼストロンでは、多種多様な洗浄装置だけでなく、残渣の種類に合わせて対応可能な分析装置を社内に保有しているため、ワークや使用フラックス、実装構造に応じた洗浄プロセスの検討から、清浄度評価・残渣分析までを一貫してサポート可能です。

リーク電流対策においてお困りの際は、ぜひゼストロンまでご相談ください。
お客様のニーズに合わせた解決策をご提案させていただきます。

  • フラックス洗浄でリーク電流発生のリスクを抑えたい
    洗浄テスト
  • リーク電流が発生し不具合が起きているが、原因が分からない
    分析サービス

お問い合わせ

残渣の種類ごとに分析・評価することが可能

おすすめ資料「静かなる進化」はなぜ生じたのか
ー絶縁性と樹脂接合強度の相関ー

下記に当てはまる方は、ぜひ資料をダウンロードください。

  • 樹脂封止後の剥離・絶縁不良の原因を知りたい
  • 高信頼性デバイス向けに、洗浄と表面処理をどう最適化すべきか知りたい
  • サイレントキルを防ぐための表面設計の考え方を学びたい
    無料ダウンロード
実装技術2025年12月の寄稿記事「静かなる退化はなぜ生じたのか」の技術資料

洗浄から清浄度分析までワンストップで

洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。

弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

お問い合わせ