基板の腐食の原因と対策|発生メカニズムから分析手法まで解説

電子機器の心臓部とも言える基板は、その信頼性が製品全体の品質を左右します。しかし、基板の腐食は回路のショートや断線といった不具合に直結し、電子機器の信頼性を低下させる要因となります。
本記事では、基板の腐食がどのようにして発生するのか、そのメカニズムから予防策、さらには万が一腐食が発生してしまった際の原因特定手法まで解説します。


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  • フラックス洗浄 / 洗浄が求められる分野とは?
  • 洗浄剤の種類と選定方法(水系洗浄剤・溶剤系洗浄剤)
  • 洗浄方式の種類と選定方法(スプレー・超音波・噴流)
  • 残渣評価(分析)の目的や手法)
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一般的に基板における腐食は、金属(銅パターンや端子など)が環境中の水分や汚染物質と反応して劣化する現象です。
この腐食は、ショートや断線、接触不良などを引き起こし、電子機器の信頼性を低下させる要因となります。

特に近年の電子デバイスは高密度実装が進んでおり、微細な腐食であっても重大な不具合につながるケースが増加しています。

基板の腐食

1.1 基板の腐食が引き起こす主な不具合

基板の腐食によって生じる代表的な不具合は『電気的異常』『性能劣化・故障』の2つです。

不具合の種類 主な不具合内容
電気的異常 ショート、絶縁抵抗低下(イオンマイグレーション)、断線
性能劣化・故障 接触不良、はんだ接合部の強度低下、誤動作

 

ピン上の腐食生成物

2. 基板に腐食が発生する原因とは?

基板の腐食は金属腐食の一種であり、金属・水分(電解質)・電位差の3つの要素が揃うことで進行します。
代表的な例として、異種金属間ではガルバニック腐食により一方の金属が優先的に溶出します。

2.1 腐食発生のメカニズム:ガルバニック腐食

基板上で特に注意が必要なのがガルバニック腐食と呼ばれる現象です。これは、イオン化傾向の異なる二種類以上の金属が、電解質溶液中で電気的に接触している場合に発生します。

1金属のイオン化

金属原子が電子を失い、水などの環境中に溶けやすいイオンへと変化

2 | イオンの移動

イオン化傾向の異なる2種類の金属が電解質を介して接触すると、イオン化した金属が電解質内を電位差により移動
イオン化傾向の大きい金属がアノード(陽極)となり優先的に電子を放出

3 | 腐食

アノード側で金属の溶出が進行し、腐食生成物が形成

このような異種金属の組み合わせは、基板上の微細な配線や接続部において、予期せぬ腐食を引き起こすリスクを高める要因となります。

 

2.2 腐食の主な原因

電子機器は、使用・保管環境において目に見えないガスや湿気、塵埃といった影響を受けており、これらが長期的に基板の信頼性を損なう腐食の原因となります。
また、設計や材料選定が適切であっても、製造や部品実装プロセスにおける管理の不備によって腐食が発生することがあります。
このように、腐食の原因は環境要因と製造プロセス要因に大別され、複合的に作用するのが特徴です。

分類 要因 作用・影響
環境要因 湿気 汚染物質を溶かし電解質を形成
腐食性ガス 硫化水素などが金属と反応
塩害 塩化物イオンが付着し腐食促進
製造要因 フラックス残渣 活性成分が残り腐食を誘発
はんだ 合金間の電位差で局部腐食
めっき不良 ピンホール等から銅が露出
取扱・保管不良 指紋や汚染物質の付着

 


3. 基板の腐食を未然に防ぐための対策とは?

製品ライフサイクルの設計、製造・実装、保管・運用、評価といった各段階で適切な予防策を実施することで、腐食リスクを大幅に低減できます。

工程 対策
設計 耐腐食材料選定、防湿設計
製造・実装 フラックス洗浄最適化、コーティング
保管・運用 温湿度管理、結露防止
評価 腐食試験・清浄度評価

 

この中でも特に重要となるのはフラックス残渣「管理」です。
耐性強化のために行うコーティングも、フラックス残渣がある状態で施工すると、内部に水分を引き寄せて滞留させてしまう可能性があります。その結果、腐食をより進行させてしまうリスクもあります。

そのため、適切な洗浄プロセスの選定を行い、基板表面の清浄度を確保し、洗浄後の清浄度評価による検証が、腐食対策において重要となります。
ただし、フラックス洗浄は一律に適用できるものではなく、はんだペーストの種類や基板構造、実装部品に応じて最適な洗浄方式や洗浄剤を選定する必要があります。

樹脂コーティング下で結露が発生
コーティング下で結露発生

ゼストロンでは、お客様のワークに応じた最適な洗浄プロセスを選定するための洗浄テストを実施しています。詳しくは下記ページをご覧ください。
洗浄テストの詳細を見る

さらに、「洗浄したから問題ない」と判断するのではなく、洗浄後は清浄度評価を通じてプロセスの妥当性を確認することが重要です。詳しくは下記ページ・資料をご覧ください。
洗浄後の清浄度評価 フラックス残渣や焼結接合後の残渣の分析方法


4. 【フラックス洗浄事例】洗浄の有無と条件の違いが腐食リスクに与える影響

未洗浄のワークと洗浄したワーク(洗浄条件の違う3パターン)にて、マイクロスコープとSEMによる観察・分析を行い、さらにEMCテストにより絶縁抵抗性も確認しました。

▼洗浄・評価条件
  • はんだペースト:S3X58-HF950W
    (株式会社弘輝 様)
  • 洗浄剤:HYDRON® SE 220  20%濃度
  • 洗浄方式:超音波
  • 洗浄温度:60℃
条件 洗浄時間 1stリンス 2ndリンス
未洗浄 - - -
ワースト 0.5分 洗浄剤3wt%添加水 常温 0.5分 なし
不十分 2分 洗浄剤3wt%添加水 常温 2分 なし
ベスト 10分 純水 常温2分 純水 40℃ 2分

 

<EMCテスト条件>
IPC-TM-650 test methods manual 2. 6. 14. 1 準拠
65℃ 88.5% 500時間

<分析(SEM-EDS)条件>
型式:JSN-IT710HR/LA
入射電圧:5.0~10.0kV
WD:10mm

走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法とは、加速された電子線を照射し試料表面の拡大観察を行うSEMと、その電子線照射によって発生する特性X線を検出し元素分析を行うEDSを組み合わせた装置です。
▼結果

ポイント1 | マイクロスコープによる外観検査
未洗浄の基板において、変色を確認
→腐食が進行する可能性
 

ポイント2 | SEM-EDSによる分析
マイクロスコープでは観察困難な場所も、元素分析ではフラックス残渣由来の炭素(C)が検出
→残渣が湿気と反応して電解質環境を形成し、腐食の起点となる可能性
 

ポイント3 | EMCテストによる評価
洗浄条件が不十分な場合、基板上に残存したフラックス残渣により絶縁抵抗値が低下

これらの結果から、フラックス残渣は腐食リスクの増大電気的信頼性の低下につながることが分かりました。
したがって、適切な洗浄条件の確立と清浄度管理を行うことが、基板の腐食を未然に防ぎ、長期信頼性を確保するうえで重要です。


5. 腐食発生時の分析手法

もし腐食が発生してしまった場合、再発防止のためには、単なる現象の観察だけでなく、化学的な分析に基づいて原因を特定する必要があります。ここでは、腐食発生時の故障解析に用いられる分析手法について解説します。

5.1 外観・成分分析(SEM-EDS/EDX)

SEMが形状(見た目)を観察する技術であるのに対し、EDXは成分(中身)を特定する技術であり、両者を組み合わせることで腐食の状態と原因を総合的に把握することが可能です。

SEM-EDSで残渣を分析
  SEM EDS(EDX)
分かること 腐食の形状・形態(デンドライト、ピッティング、クラックなど) 元素の種類と分布(Cu、O、Cl、Sなど)
目的 腐食が「どのように起きているか」を把握 腐食が「なぜ起きたか(原因物質)」を特定
観察・
評価例
ピッティングの発生
→ 局部腐食の可能性
めっき層のクラック
→ 水分やイオンの侵入経路となり、腐食の起点となる可能性
Cl検出
→ 塩素由来汚染(フラックス残渣など)
S検出
→ 硫化腐食(腐食性ガスなど)

 

5.2 イオン成分分析(イオンクロマトグラフィー)

基板表面の目に見えない微量なイオン性汚染物質、特に腐食の起点となるハロゲンイオンなどを高精度に分析する手法としてイオンクロマトグラフィーが用いられます。

イオンクロマトグラフィによる測定
分かること 腐食の要因となるイオン性汚染物質の種類と濃度(Cl⁻、SO₄²⁻、Na⁺、有機酸イオンなど)を定量的に把握できる
目的 腐食を引き起こす原因物質(フラックス残渣、洗浄剤残留、指紋など)を特定
具体例 ハロゲン化物イオン(特に塩化物イオン)が高濃度で検出
→フラックス残渣が原因で腐食が発生
ナトリウムイオン(Na⁺)や塩化物イオン(Cl⁻)が検出
→作業者の指紋(汗成分)による汚染が原因で腐食が発生

 

これらの手法を適切に組み合わせることで、腐食生成物の形態、元素構成、イオン成分といった詳細な情報を得ることができ、腐食の原因を特定し、再発防止につなげることができます。

ゼストロンでは、SEM-EDSやイオンクロマトグラフィーをはじめとした各種分析手法を用い、お客様の基板における腐食や不具合の原因特定をサポートしています。分析結果に基づき、再発防止に向けた具体的な対策提案まで対応可能です。
分析サービスの詳細については、下記ページをご覧ください。
分析サービスの詳細を見る

  • 腐食が発生した基板は修理できる?

     腐食が軽微な場合には洗浄や再はんだ付けなどで修理できることもありますが、腐食の進行状況によっては対応が難しいケースもあります。
    また、外観上は問題がないように見えても、内部で腐食が進行している可能性もあるため、修理の可否を判断するにあたっては、場合によってはSEM-EDSやイオンクロマトグラフィなどによる詳細な評価が必要となることがあります。
    評価をご希望の方は下記ページをご覧ください。

    フラックス残渣分析・不具合原因調査・清浄度評価|分析サービス

  • 腐食とイオンマイグレーションの関係は?

    イオンマイグレーションは、腐食の一形態として発生する現象です。腐食によって生じた金属イオンが移動することで、短絡や絶縁不良といった電気的な不具合につながる場合があります。
    イオンマイグレーションについては下記ページをご覧ください。

    イオンマイグレーションの原因と対策 基板の見えない不良を防ぐ

基板の腐食は、設計・製造・使用環境といった複数の要因が重なって発生するため、特定の対策だけで完全に防ぐことは難しい現象です。
特に、腐食の起点となるフラックス残渣を除去するためには、基板や実装条件に応じた洗浄工程を選定することが重要です。

ゼストロンでは洗浄テストを通じて、お客様のワークに応じた最適な洗浄工程の選定をサポートしています。
一方で、すでに腐食や不具合が発生している場合には、原因の特定が重要となります。
ゼストロンでは、分析サービスを通じて原因の特定を行い、その結果に基づいた対策をご提案しています。

基板の腐食に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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  • 洗浄剤の種類と選定方法(水系洗浄剤・溶剤系洗浄剤)
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洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。

弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

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