シンター接合後に残留する有機物残渣の洗浄評価
【共同研究'26】マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン 様 x ゼストロンジャパン
車載・産業用途のパワー半導体分野では、熱ストレスに対する高耐性・高信頼性を実現できる接合技術として、はんだ接合に代わる「シンター接合」の採用が広がっています。
無洗浄はんだ接合技術と同様にシンター接合も基本は「無洗浄」での設計がなされています。
ですが、現在主流となっているシンター接合手法は高温・高圧条件下で行われるため、接合プロセス中に発生・固着した残渣が、後工程や長期信頼性に影響を及ぼす可能性があり、1つの解決手法として洗浄が挙げられます。
シンター接合には「無加圧」手法も存在するものの、強度や再現性の観点から用途は限定される傾向にあります。
また、残渣レスではありますが、「残渣ゼロ」ではないため、信頼性を得るためには、同様に洗浄は1つの解決手法となりえます。
シンター接合デバイスの洗浄需要が高まる中で、本検証では、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン様と共同で、あえて残渣が残存しやすい条件で作成したサンプルを用いて洗浄評価を実施し、シンター接合後に求められる洗浄プロセスについて検証しています。
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シンター接合後のデバイス表面には、主に「有機物残渣」「金属酸化物(銅酸化物)」「イオン残渣」といったコンタミネーションが残留する可能性があります。
| 残渣の種類 | 残渣の要因 | 残留することによる懸念事項 |
|---|---|---|
| 有機物残渣 | ペースト中の分散溶剤 金属粒子の保護成分等 |
樹脂接合性、ワイヤーボンディング強度の低下 |
| 金属酸化物 (銅酸化物) |
高温・高圧条件による基板表面酸化 | 水分混入による絶縁不良、接合不良 |
| イオン残渣 | 作業環境や部材付着による持ち込み | 表面不均衡化による樹脂接合強度の不安定化、放熱性の低下 |
高温・高圧下で接合が行われることで、有機物残渣においては、実質的に熱圧着・固着した状態となり、一般的な洗浄条件では非常に除去しにくいという特徴があります。
一方で、有機物残渣に含まれる接着成分や緩衝材は、チップと基板の安定した接合を実現するために不可欠な材料です。
そのため、接着成分や緩衝材は、接合に必要な材料でありながら、接合後には確実な除去が求められることが、シンター接合後の洗浄における大きな課題となります。
洗浄が不十分で有機物残渣が残留してしまった場合、封止樹脂の密着不良やワイヤーボンディング不良につながる可能性があるため、洗浄が必要か否かの選択が求められると同時に、洗浄を選択した場合は「適切」な洗浄プロセスの選択が求められます。
▼接合不良
▼密着不良
本共同研究では、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン様が開発したシンター剤を用いて、接着成分を強制的に添加した過剰条件サンプルを作成し、有機物残渣に焦点を置いて洗浄評価を実施しました。
また、洗浄前後の状態をマイクロスコープ観察やSEM-EDS、FT-IR(ATR法)による分析を行い、清浄度を確認しました。
▼評価条件
洗浄サンプル:仮留め剤(タック剤)を強制的に過剰塗布した条件サンプル
シンター剤:Argomax® 8022
洗浄方法:
| 洗浄剤 | VIGON® PE 305N (濃度15%、液温65℃) |
|---|---|
| 洗浄方式 | スプレー |
| 洗浄時間 | 5分 |
2.1 評価結果
外観観察やSEM-EDS、FT-IRによる分析の結果から、シンター接合後に残留する接着成分・緩衝材由来の有機物残渣は、VIGON® PE 305Nによる洗浄で効果的に除去されていることが確認できました。
微細接合はんだペーストの洗浄性検証でも解説した通り、分析のポイントとしては、SEM-EDSとFT-IRのクロスチェックによる評価です。SEM-EDSは高精度に表面状態の判別ができ、元素構成比も確認できるため、非常に広範囲の情報が得られます。しかし、有機成分の判別は難しいのが実情です。
有機物の査証といえる「C:炭素」がSEM-EDSで検出された場合、残留しているのが接着剤・緩衝材・接合材由来、または洗浄剤成分なのかFT-IR分析を行うことで明確にすることが可能です。
シンター接合デバイスの表面は多くが金属で構成されており、原則赤外吸収を起こさないため、「赤外吸収がない=有機物系の残渣は除去」と判断できます。
加圧方式におけるシンター接合後に残留する有機物残渣は、基材表面に熱圧着されており、一般的な洗浄手法では十分な除去が困難です。
VIGON®シリーズの洗浄剤は、汎用溶剤による溶解洗浄とは異なり、剥離を主体とした洗浄機構を有しているため、固着した有機物残渣を基材表面から効率的に洗浄することが可能となります。
▼MPC®洗浄(剥離機構)
①超音波・搖動・温度等の物理因子により活性化
②マイクロフェーズがコンタミに作用
③コンタミは洗浄液中に放出される
④液中分散状態となる
相平衡作用が働く
⑤コンタミは洗浄液中に放出される
また、現代のパワー半導体に求められる特性を考慮して設計されたVIGON® PE 305Nは、以下の特徴を有しています。
【洗浄性だけではないVIGON® PE 305Nの特長】
- アミド化合物やポリマーといった難溶性物質の洗浄性に優れる
→無洗浄タイプのフラックス洗浄にも好適 - 銅酸化物の選択的除去が可能
→銅表面の大きな変質を防止し、高周波デバイスにおける整流特性を維持 - 銅酸化物除去後の表面の再酸化を防止
- 樹脂接合に適した表面を形成
→安定化した形成面を維持し、長期信頼性を確保
ゼストロンは単に洗浄性が高いだけではなく、高付加価値の機能を有した製品も展開しております。より高い信頼性が求められる電子デバイス洗浄の将来を見据え、技術革新に取り組んでいます。
4. 洗浄方式の重要性
洗浄方式としては超音波洗浄でも除去は可能となりますが、固着した有機物の洗浄にはスプレー方式の「液置換性」が有用であることが、多くの洗浄事例から確認できています。
剥離したコンタミの再付着を効果的に抑制できる点も特長です。
▼噴流方式の洗浄
▼スプレー方式の洗浄
▼超音波方式の洗浄
また、シンター接合デバイスは「多種金属の複合体」とも言え、従来のパワー半導体と比較しても「ガルバニック腐食」の懸念が高いと言えます。
スプレー洗浄方式では、洗浄剤との接液時間が限定化されるため、腐食作用の影響を軽減できる利点があります。
▼超音波洗浄
洗浄機の材質:ステンレス
超音波洗浄は常に接液しているため、腐食のリスクが大
▼スプレー洗浄
常に洗浄液は置換されており、イオン濃度は高濃度になりにくい
スプレー停止後は温度が低下
→洗浄作用が低下し、媒体効率も低下
シンター接合後の洗浄は、単に汚れを落とす工程ではなく、デバイス信頼性を左右する重要なプロセスとなりえます。とりわけ、シンター接合後に発生する有機物残渣に対しては、洗浄剤だけでなく、洗浄方式や評価手法を含めた総合的な検討が必要です。
ゼストロンでは、多数のシンターデバイスに対する洗浄実績をもとに、洗浄剤・洗浄方式の選定から分析、洗浄プロセスの構築までワンストップでサポートいたします。
シンター接合後の洗浄において、
「残渣が見えない」「どこまで洗浄できているか判断できない」といった課題をお持ちの場合は、ぜひゼストロンにご相談ください。
洗浄という観点から、デバイスの信頼性向上をサポートします。
【共同研究:マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社 様】
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2026年1月21日から23日まで行われた第40回ネプコンジャパンの様子を、1分の動画にまとめました。当日展示した内容や会場の雰囲気も併せてご覧ください。
洗浄から清浄度分析までワンストップで
洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。
弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。
そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。