微細接合はんだペーストの洗浄性検証
~FT-IR・SEM-EDSによる包括的な清浄度評価事例~

【共同研究'26】日本スペリア社 様 x ゼストロンジャパン

電子機器の高機能化・小型化が進む中、パワー半導体や車載、産業機器などの高信頼性分野において、微細接合はんだペーストの重要性が高まっております。
微細接合を伴うはんだ粒径は汎用品となっているType4からType5へ移行しつつあり、センシングデバイスではType6 /Type7を用いたデバイスも見受けられるようになっています。
ですが、電極間距離の縮小化・微細ピッチ化・低スタンドオフ実装の需要がより高まったことで、これまでは問題とならなかったはんだ接合後のフラックス残渣が、絶縁信頼性や後工程品質に影響を及ぼすリスクが顕在化しています。
これらの理由により信頼性確保の観点から、フラックス洗浄を実施するか否か判断を迫られる事象が増加しており、高機能性はんだペースト・フラックスの洗浄は新たな課題となっています。

本研究では、日本スペリア社様と共同で、同社が開発した『微細接合向け高信頼性はんだペースト』を対象に、微細接合における洗浄特性の考察、化学的分析に基づくFT-IRおよびSEM-EDSによる評価の有用性検証を実施しました。

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1.1 微細接合向けはんだ・フラックスの化学的特性

微細接合はんだペーストを用いた高密度実装では、洗浄後の状態を外観だけで判断することが難しいといえます。
低スタンドオフ構造や狭ピッチ実装では、フラックス由来の残渣が微細部に残存した場合、絶対量が少ないため目視では不十分となってしまいがちです。そのため、外観上は問題がないように見えても、実際の清浄度とは一致しない場合が見受けられます。

また化学的な特性としても近年の微細接合向けはんだペーストは、以下の4つの理由により難溶性物質を含む、あるいは従来品として活性剤含有量が多い設計が採用されています。


酸化抑制
 


接合強度の向上
 


印刷時の形状保持
 


経時安定性
 

その結果、残渣は有機物・無機物が複合した成分で形成されますが、従来の仕様と比較し、残渣が硬くなる、経時変化の影響が出やすくなる、金属塩の発生など様々な変化をもたらすため、全体的に洗浄の難易度は難化する傾向となり、洗浄する際は注意が必要となります。
これらの要因は、従来使用していた「はんだ」を微細接合用途に変更した際に生じる相違点であり、洗浄工程の見直しが必要となる理由の一つです。加えて、こうした点は盲点となりやすい傾向があります。
このような化学的背景に加え、微細接合ではわずかな残渣であっても電気的・化学的影響を受けやすく、従来よりも不具合につながるリスクが高まり、絶縁不良やマイグレーション、後工程不具合のリスク要因となります。

1.2 分析の手法

1.1 微細接合向けはんだ・フラックスの化学的特性で解説した理由から、洗浄後に化学的な分析を行い、万が一残渣が生じている場合は「どのような成分が、どの程度残っているのか」を正確に把握し、清浄度を客観的に評価していくことが重要です。

そのため、微細接合品の最適な洗浄評価方法として、外観観察に加え、FT-IRやSEM-EDSといった化学的分析手法を用いた清浄度評価は不可欠と言えます。分析データに基づいて洗浄性を確認することで、洗浄条件や洗浄プロセスの妥当性を客観的に評価でき、安定した量産工程へつなげることができます。

微細接合品における最適な洗浄評価方法の考え方の流れ

本洗浄評価では、微細接合を想定した基板を用いて、日本スペリア社様の新規製品となる微細接合向けはんだペースト(ディスペンスタイプ)を対象に洗浄性の評価を実施しました。
洗浄後の基板については、有機物・無機物由来の残渣の有無を確認するためのFT-IRとSEM-EDSによる分析を実施し、基板表面の清浄度を確認しました。

▼評価条件
洗浄サンプル:0402/0603 部品実装基板(スタンドオフ:30µm)
使用はんだペースト:SN97C P613 D6(日本スペリア社様)
特性:金属塩発生抑制・安定性の強化(粘性・対候性)
洗浄方法:

洗浄剤 VIGON® A 301 (濃度15%)
洗浄方式 スプレー (0.3MPa)、超音波 (40kHz)
洗浄可能温度 55℃ (スプレー)、60℃ (超音波)
洗浄可能時間 2分

 

FT-IRを用いて有機物由来の残渣の有無を評価した結果
FT-IRで分析

洗浄後サンプルでは、基板と異なる特有の波形は確認されず、有機物残渣が洗浄によって適切に除去されていることが確認されました。

| ポイント
基板固有のスペクトルと一致 = 表面の有機物組成は同一 ≒ 清浄度が得られている 

洗浄良好品では、元素「C(炭素)」の構成比が基板と同等であり、清浄度が得られていることを確認できました。

| ポイント
基板固有の元素比と一致 = 表面の元素組成は同一 ≒ 清浄度が得られている 
Cが多く検出される ≒ 基板固有の「C」に加え、残渣由来の「C」を同時に検出するため
Baの検出傾向 ≒ 基板表面に堆積物があった場合は割合が変動
 ▶ 元素マッピング・他元素の割合変動と加味し、総合的に判断することを推奨
 ▶ Baは基板に使用される難燃剤BaSO4由来として検出される


本共同研究では、微細接合品を想定した実装基板に対して洗浄を行い、清浄度分析を実施しました。その結果、洗浄が適切に行われていることを確認しました。

微細接合向けはんだペーストは、接合信頼性を高めるため活性剤量が多く、洗浄後も残渣が残留しやすく、洗浄が難化する傾向にあります。さらに、低スタンドオフ高さが低くなる傾向にあり(高さ20µm以下)、洗浄剤が浸透しても液置換性が得られにくい構造となるため、外観上は問題がなくても微量の残渣が基板表面・微細部に残存してしまうリスクは高いと言えます。

このような背景から、微細接合向けはんだペーストを用いた実装では、外観だけで清浄度を判断するのは十分とはいえず、洗浄後に化学的分析を行い、最終的な確認を行うことが重要です。製品の長期信頼性を確保するためには、化学的分析に基づく洗浄評価を行うことをおすすめします。

寒川にあるゼストロンジャパン社屋内の分析センター

4. 洗浄から分析、プロセス最適化まで ― ゼストロンのワンストップ技術サポート

ゼストロンでは、FT-IRやSEM-EDS、イオンクロマトグラフィー(IC)、ROSEテストなど、多種多様な分析装置を備え、残渣の種類や状態に応じた総合的な清浄度分析を行っています。
外観観察だけでは判断が難しい有機物残渣やイオン残渣、金属塩についても、化学的観点から評価することで、洗浄後の基板表面の状態を客観的に把握することが可能です。

残渣の種類ごとに分析・評価することが可能

また、ゼストロンの分析サービスは、分析結果のご報告だけでなく、その結果を元に洗浄条件や洗浄方式、リンス工程を含めた洗浄プロセス全体の最適化までサポートします。
洗浄テストと分析サービスを組み合わせることで、基板仕様や実装条件に適した洗浄工程の構築を支援いたします。
本記事で紹介させていただいたような高機能性はんだを用いた微細接合技術を伴うセンシングデバイスや、高い清浄度と信頼性が求められる製品の洗浄・分析でお困りの際は、ぜひゼストロンまでお問い合わせください。洗浄工程の新規立案のお手伝いや、現行洗浄方法の変更・問題点の考察などのご相談にも対応いたします。
洗浄から分析、プロセス最適化まで、ワンストップでサポートいたします。 

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【共同研究:株式会社日本スペリア社 様】


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洗浄から清浄度分析までワンストップで

洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。

弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

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