基板の不具合事例10選|原因解析から再発防止策まで解説

基板の不具合は信頼性を大きく損なう深刻な問題です。
本記事では、はんだ付けや実装工程で生じる不具合や、化学的な要因によって引き起こされる不具合など、基板で発生しがちな不具合10事例を取り上げ、洗浄の視点から技術的な背景、判断手法・対策案について解説いたします。


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基板に発生する不具合は多岐にわたりますが、その性質や原因に基づいて「はんだ付け関連の不具合」と「動作・環境不具合」の2つの主要なカテゴリに大別して事例をご紹介します。
さらに、近年パワー半導体分野で注目されているシンター接合特有の不具合も番外編として取り上げます。

  カテゴリ 不具合
1 はんだ付け関連の不具合 はんだブリッジ(ショート)
2 はんだボール
3 マンハッタン現象(チップ立ち)
4 濡れ不良・未はんだ
5 はんだクラック
6 ボイド
7 動作・環境不具合 マイグレーション
8 リーク電流
9 腐食
10 番外編 シンター接合における不具合

 

応力・疲労・振動によって発生した、はんだ接合部のクラックや破断
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1.1 はんだ付け関連/動作・環境不具合

不具合事例と起こり得る現象・リスクを以下の表にまとめました。

カテゴリ 不具合 現象 リスク
はんだ付け関連の不具合 はんだブリッジ
(ショート)
隣接する端子間が余分なはんだでつながり、電気的にショートする 部品破損・誤動作・発煙発火
はんだボール はんだ付け箇所の周辺に微小なはんだ粒が飛散・付着する 振動や衝撃で剥がれ落ち、別の箇所でショートを引き起こす
マンハッタン現象
(チップ立ち)
チップ部品がはんだの表面張力で垂直に立ち上がる 片側しか接続されず、導通不良を引き起こす
濡れ不良・未はんだ はんだが正常に広がらず接合が形成されない 導通不良や接合強度の低下
はんだクラック はんだ接合部に亀裂が入る 接続不良や製品の機能停止を引き起こす
BGAなど外部から確認しづらい部品で特に注意が必要
ボイド はんだ接合部の内部に気泡が形成される 接合強度の低下・放熱性悪化・電気抵抗値上昇
動作・環境不具合 マイグレーション 「水分」「電圧」「電解質」の3つが揃った環境下で金属イオンが移動し、導体間を物理的に接続する 短絡(ショート)
リーク電流 絶縁されているべき回路間で微小な電流が漏れ出す 誤動作・消費電力増大・信号品質低下
腐食 金属が水分・腐食性ガス・フラックス残渣などと反応して劣化する ショート・断線・接触不良

1.2 遅延型の不具合が増加している要因

昨今増加傾向にあるのは、製造直後には問題なく動作していても、時間の経過に伴って基板に予期せぬ不具合が発生するケースです。これには主に3つの要素が関連しています。

微細化

  • 物理的なはんだのハンドリングが困難(微小量の制御)
  • 電極間の距離が短小化→絶縁特性が得られにくい

デバイスの高機能化

  • 高周波技術の台頭(整流効果・熱の影響が顕著)
  • 極端な制御のデバイスが増加(微小電力なセンサー部品・大容量のパワーデバイス)

フラックスの進化

  • 無洗浄技術の進展・高機能水溶性フラックスの開発
    (熱耐性・濡れ性の向上→活性剤仕様の多様化・ポリマーなどの難溶性物質の添加)

電子部品の小型化・高密度化により電極間距離が狭くなっており、温度・湿度・汚染物質の量などあらゆる条件を厳密に管理しなければ、わずかな電流の漏れや電圧変化が不具合に直結するようになっています。その結果、これまでは許容できていた些細な不具合が、現代においては許容できない現象として、結果的に不具合に結びついてしまうケースが増えています。

不具合の多くは異物による「汚染」により影響してしまうケースが多く、その中でも代表的な要因が「フラックス残渣」であり、フラックス中の活性剤や環境・部材要因から混入する「イオン性コンタミネーション」となります。

特に近年開発された高機能性フラックスでは延性や透明性に優れており、目には見えにくい形状となってしまい、結果的にイオン性コンタミネーションが残留していても、外観では判断が難しい点が特徴です。
動作・環境不具合の対策としては、できるだけクリーンな環境で確実に接合を行い、必要に応じて洗浄を行い、基板を清浄に保つことが根本的な対策となります。

1.3 番外編:シンター接合における不具合

現象 リスク
接合後に有機物残渣・銅酸化物・イオン残渣といったコンタミネーションが残留する ワイヤーボンディング不良・モールド樹脂の密着不良・放熱特性の低下・マイグレーションの発生

パワー半導体分野において近年注目を集めているシンター接合ですが、確実な接合と接合後の信頼性確保の観点からは同様の対策が必要です。
シンター接合時に発生する各種の残渣はフラックス残渣と比較して固着度が強いため、通常のフラックス洗浄より高い洗浄技術が求められます。


2. 不具合の原因を特定する解析・分析手法

基板の不具合に直面した際、現象を確認するだけで終わってしまうと、根本的な解決には至りません。「なぜこの不具合が発生したのか」という原因を突き止め、再発防止へと繋げるアプローチが重要です。

基板製造現場で一般的に行われる外観検査やX線検査は、はんだブリッジやはんだボール、ボイドといったはんだ付け関連の不具合の検出に有効です。
しかし、マイグレーション腐食といった不具合の原因となるコンタミネーション(フラックス残渣やイオン性物質など)は目に見えないケースが多いため、高信頼性が求められる製品では、開発段階においてより確実な分析手法による判定が不可欠となります。

2.1 SEM-EDSによる詳細分析

目視やX線検査では捉えきれない微細な不具合や原因物質の特定に有効なのが、走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析(EDS/EDX)を組み合わせたSEM-EDS(EDX)です。

走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法とは、加速された電子線を照射し試料表面の拡大観察を行うSEMと、その電子線照射によって発生する特性X線を検出し元素分析を行うEDSを組み合わせた装置です。
  特徴 活用例
SEM 電子線を照射し、表面の微細な凹凸や形状をμmオーダーで観察 腐食生成物の形態やマイグレーションの進展状況の確認
EDS 観察領域の元素組成を分析 腐食の原因がフラックス残渣由来か外部環境由来かの特定

これらの特性を組み合わせることで、不具合の原因を化学的な観点から把握し、的確な対策へと繋げることができます。

分析事例:

SEM-EDS解析事例

SEM-EDS反射電子像
入射電圧:10kV
倍率:x1,000
モード:低真空

SEM-EDS観察部分の元素分析


解析結果からスズ塩形成および外因のコンタミネーション混入を確認
接合影響や長期信頼性への懸念を示唆する結果
 

マイグレーションリーク電流腐食といった問題の根源には、基板表面のイオン性コンタミネーションが大きく関わっています。こうしたイオン性物質は、目視での確認が困難であり、イオンクロマトグラフィーによる評価が有効です。

イオンクロマトグラフィーは、基板全体から残留イオンを抽出し、イオン種ごとに分離し数値化することができるのが特徴です。定量的な分析を行うことで、検出されたイオンの種類を手がかりに、残渣の原因となる物質や関与している工程を特定し、適切な対策へとつなげることができます。

イオンクロマトグラフィによる測定

分析事例:


フラックス由来の可能性が高い有機酸イオンの存在を確認
 

ゼストロンでは、SEM-EDSやイオンクロマトグラフィーをはじめとした各種分析手法を用い、お客様の基板における不具合の原因特定をサポートしています。分析結果に基づき、再発防止に向けた具体的な対策提案まで対応可能です。
分析サービスの詳細については、下記ページをご覧ください。
分析サービスの詳細を見る


3. 不具合の再発防止に繋がる対策とは?

これまでに基板不具合事例とその分析手法を紹介してきましたが、最終的な目標は不具合を再発させないための対策が不可欠です。
不具合が発生してから対処する「対症療法」ではなく、製造プロセスの最適化やコンタミネーションの徹底的な管理といった「未然防止策」に取り組むことが、再発防止にはより効果的です。

3.1 製造プロセスの最適化(温度プロファイル、はんだペースト管理)

製造プロセスにおける適切な管理は、多くの不具合を未然に防ぐための基本です。特にリフロー工程とはんだペーストの管理は、基板の品質に直結します。

リフロー温度プロファイルの管理

プリヒートなどの各セクションで、温度・時間を制御することではんだボールやボイド、クラックなどの不具合を抑制できます。加熱に過不足があった場合は、上記の課題に加えて副反応による金属塩形成の割合も高くなる傾向となります。

リフロー炉を通る基板
はんだペーストの管理

はんだペーストの管理

  • 冷蔵保管を徹底し、使用前は常温に戻してから攪拌する
  • 開封後の使用期限と連続印刷時の粘度を適切に管理する

このような管理は基本事項となりますが、チキソ性の安定性やはんだ粒子の均衡性にも影響が大きいため、安定した品質維持と不具合の防止に繋がります。

3.2 無洗浄はんだの使用方法・フラックス洗浄の是非

無洗浄はんだは、はんだ接合後も安定化できるように設計がなされているのでフラックス洗浄は基本的に不要となり、コスト削減や工程短縮のメリットから多くの製造現場で採用されています。ポイントは前述したように「基本的」という点です。
下記のようなケースでは洗浄を行った方がよい場合もあり検討が必要です。

  • ワイヤーボンディング・樹脂封止
    例:接合・モールディング・アンダーフィルの充填を物理的に阻害
  • コーティングの施工
    コーティング剤に含まれる有機溶剤によりフラックス残渣が不安定となる可能性有

使用環境や要求される信頼性レベルに応じて、フラックス洗浄の必要性を事前に検討しておくことが大切です。


※無洗浄はんだの洗浄については下記ページをご覧ください。
技術コラム:無洗浄はんだを使用しているのに、なぜ洗浄する必要性があるのか

3.3 高信頼性を実現する洗浄プロセス

製品の信頼性を高めるためには、具体的にどのような洗浄プロセスを設計すれば良いのでしょうか。高信頼性を実現する洗浄とは、単に「洗う」ことだけではなく、「対象となるコンタミネーションを、基板や部品にダメージを与えることなく、要求される清浄度レベルまで確実に除去するプロセス」といえます。
この洗浄プロセスを実現するためには、以下の3つの要素がポイントとなります。

1 | 洗浄剤の選定
洗浄剤のチェック

洗浄剤は、水系・準水系・溶剤系に大きく分類されます。
はんだペーストの種類や基板構造、実装部品に応じた最適な洗浄剤を選定することが重要です。

2 | 洗浄装置・プロセスの最適化
テクニカルセンターにて洗浄テストを実施

スプレー洗浄、超音波洗浄、浸漬洗浄など、洗浄方式にはさまざまな種類があります。また、洗浄液の温度、洗浄時間、スプレー圧力といったパラメーターも、洗浄効果に影響するので、これらの要素をワークに合わせて最適化させることが重要です。

3 | 洗浄後の評価・分析

洗浄プロセスの有効性を客観的に確認するためには、分析装置を用いて洗浄後の基板表面の清浄度を測定する必要があります。
洗浄が適切に行われているかを評価することで、最適な洗浄条件を確立することができます。

洗浄剤の選定や洗浄プロセスの最適化にお悩みの場合は、ゼストロンの無料洗浄テストをご活用ください。
実際のワークを使った洗浄テストを実施し、洗浄と並行して清浄度の分析も行います。
テスト終了後には推奨プロセスを記載したレポートを提出いたします。
詳しくは下記ページをご覧ください。
洗浄テストの詳細を見る


基板の不具合は、時に生産ラインの停止や市場でのリコールといった深刻な事態を招いてしまいます。
このような不具合を根本的に解決するためには、

  • どの物質が原因となっているのか
  • どの工程で問題が発生しているのか
  • 洗浄条件やプロセスが適切か
  • 品要求レベルに対して十分な清浄度が確保されているか

といった観点から、分析・評価・対策を総合的に行うことが重要です。
ゼストロンでは、洗浄プロセスの最適化だけでなく、SEM-EDX、イオンクロマトグラフィー、FT-IRなどの分析装置を活用し、不具合原因の特定から再発防止まで一貫してサポートしています。
「原因が分からない不具合が発生している」
「フラックス洗浄後、要求される清浄度レベルを満たしているか分からない」
「不具合の再発防止に向けて洗浄プロセスを導入したいが、最適な洗浄方法や条件が分からない」

といったお悩みをお持ちの場合は、ぜひゼストロンへご相談ください。

改善事例や洗浄テスト、分析サービスの詳細については、下記ページよりご覧ください。


改善事例

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洗浄を検討するにあたって、洗浄剤だけでは完結しません。

弊社は洗浄剤メーカーではありますが、ワークに適した洗浄方式を選択するこ と、そして洗浄後の分析も重要と考えています。

そのため、洗浄剤のご提案だけでなく、洗浄方式の選定、清浄度分析もサポー トさせていただきます。

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